セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第5回:入所したいとき入所できると限らないのが高齢者施設 〜 特別養護老人ホーム待機者42万人が教えてくれたこと

昨年から本格的に始めた介護付有料老人ホームなどの高齢者施設見学も平成23年7月末現在で約70ケ所、高齢者施設も多様化し数も増え競争も厳しくなったせいか、施設側の対応も2〜3年前と比べかなり変わってきました。高齢者施設事業者も介護分野は改めてサービス業と自覚し、生き残りをかけて入所者募集に必死のようです。
だからと言って、私たちが本当に入所したい施設にいつでも入所できるかと言えば、それは別問題です。希望する施設に入所するには、施設にあった要介護度や自立度、お金の準備、心の準備などと、施設に空き室ができたときのタイミングがあるからです。
今回は、施設見学や受けた相談からみえてきた、素朴な疑問や現実についてお話ししましょう。


特別養護老人ホーム待機者約42万人のからくり

特別養護老人ホーム(以下「特養」)の待機者約42万人の情報は、改めて高齢期の暮らしの大変さを私たちに認識させてくれました。ところがつい先日、厚生労働省は、「施設が優先して入所させる必要がある」と判断される人の割合は約1割(10.8%)と驚く発表をしました。

入所申込み者の数は、約42.1万人単位:万人

  要介護1〜3 要介護4〜5
全体 24.3(57.6%) 17.9(42.4%) 42.1(100%)
うち在宅の方 13.1(31.2%) 6.7(16.0%) 19.9(47.2%)
うち在宅でない方 11.1(26.4%) 11.1(26.4%) 22.3(52.8%)

※千人未満四捨五入厚生労働省 平成21年12月発表

優先して入所させるべきと考える人の割合(施設当たり)

入所申込者 優先して入所させるべき人 入所申込者に占める割合
220.0人  A 23.9人  B 10.8%  B/A

要介護度や介護環境の困難度に該当しているか?

特養の在所者の多くは、要介護度は4〜5、また、認知症高齢者の日常自立度も下図のとおり低い(自立して生活をするのが困難)のが分かります。
とは言え、要介護1や2の人も在所はしています。ただ、現在、要介護2の人が入所しているからと言って、要介護2の希望者が誰でも入所できる訳ではないので要注意です。
施設が優先して入所させるべきと考える人の条件で多いのが、介護放棄、虐待の疑いがあること71.3%、介護者が不在、一人暮らしであることが62.2%となっています(複数回答)。
現在、特養は、申込み順でなく上記のような介護環境と要介護度などで入所の判断がされるようです。やはり、コストが比較的安い特養入所の条件は中々の難関です。


施設に入所する心の準備はできているか?

多くの人は、住み慣れた自宅で最期まで暮らしたいと願っています。ただ、誰もが高齢になり自宅で介護を受けることが難しくなり、施設入所を現実のものとして受けざるを得ないときを迎える可能性もあります。とは言え、高齢者施設への入所を即受け入れられる人ばかりではありません。

ところが、本人の気持ちが変わるのを待って施設申込みをしたのでは、本当に入所したいとき入所できない、資金が続かない場合があります。そこでやむを得ず、早めに家族や福祉関係者などが特養やグループホーム、費用が安い介護付有料老人ホームなどの申込みをしておくのが一般的です。


入所資金の備えはあるか?

施設入所で、本人や家族の一番の関心事はお金のことだそうです。手持ちのお金で大丈夫だろうかと心配になるのです。施設に入所すると規則正しい生活で長生きする傾向にあります。状況が変わり発生するオムツ代や医療代などを含め、最後まで支払うことが可能か、年金を土台に資金計画はゆとりを持って慎重にする必要があります。

特に、妻(夫)が自立で夫(妻)が要介護などの場合、自宅と施設の両方の維持費用はかなり負担です。又は、仮に夫婦で介護付有料老人ホームに入所の場合、自立の妻の生活サポート費など要介護者並みかそれ以上必要になることが多く思わぬ出費です。ごく普通に暮らす人こそ自宅維持、自宅売却、など様々なパターンの資金計画が求められます。

現在、認知症で生活保護を受けている人は、一部のグループホームに入所できる制度があります。月約20万円の費用を考えなくていい訳ですから嬉しい制度です。ただ、頑張ってかなり資金を貯めた人が、最後まで払える予定が立たず入所できないケースがあることを考えると、何も準備せずにそれなりの施設に入所できるのは複雑な心境です。本当の弱者は一体誰なのかと・・・


とりあえず申込みしておこう! にも、訳がある

入所一時金が安く、毎月の管理費等が安い介護付有料老人ホームは、一般的に待機者が沢山います。中には年単位で待機のところもあります。費用負担を考慮すれば、こうした安い施設には要介護度の悪化を見通して早めの申込みもありそうです。今は、とりあえず老人保健施設や高齢者専用賃貸住宅(高専賃)に入所しているが、できれば費用と対応内容から特養や他の安い施設に移りたいと複数申込みする人がいてもおかしくありません。
または、今スグ入所は資金面で苦しいが、できるかぎり在宅で節約して施設入所を遅らせ、施設入所期間を短くし費用負担を軽くしたい。そのために今は入所を希望しないが、とりあえずその時のために申込みをしておこうという人もいます。
一方、入居一時金が高い施設などは、安い施設とはまた違ったある種のステータスを求め、将来のために「とりあえず申込みこんでおきたい」となります。
特養に限らず、およそ以下の要素が満たされるまで、とりあえず複数の施設に申し込む人が増えるのも止むを得ない事情があります。だからこそ、今すぐ、入所したい人が申込み者の1割しかいなくても、イザ自分が入所したいとき以下の条件を一部満たせず即入所できないと言う訳です。


先を見通す目が試される「セカンドライフ」

成りゆき任せでも就労収入があり自分で決断ができた現役時代に比べ、思考能力・体力・経済力などが減少する高齢期は、少しでも早いうちから事態の急変に対処できる「心とお金」の準備しておくとよいでしょう。為るようにしか為らないのが世の常ですが、いざというときの選択肢を広げ、自分らしく暮らす役に立つでしょう。セカンドライフの豊かさは、あなたの準備次第で決まるといっても過言ではありません。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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