セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第11回:人生後半だからこそ増すリスク 〜 ゴミ・病気・介護・失業・・

高齢者本人から年金や健康保険などを含めたお金の相談を受けたり、判断能力がない人や不十分な人の成年後見人や保佐人などから伺い知ることができるのは、(※参考 社会保障の落とし穴 2009年7月)特別な人の生活が破綻するのでなく誰もが高齢期の落とし穴に陥る可能性があるということです。そして、破綻に至るまでの経過には共通の内容も多いのが現実です。今回は、福祉の現場でよくある例を取り上げてみましょう。


Aさんの場合 〜 判断能力が不十分・自宅がゴミの山

一人で暮らす判断能力が不十分になった高齢者の自宅には、生ゴミや新聞紙、雜誌など ありとあらゆるゴミが信じられないほど山積みになっているというケースが、意外なほど に多いものです。
Aさんの場合も足の踏み場も無いほどゴミが多すぎて、一体部屋のどこに本人が寝ていたのか疑ってしま う程でした(周りはゴミと認識しても本人はそう感じてないことがあるけれど・・・・ ここで言うゴミは誰がみてもゴミとわかるもの)。

こうなるまでには以下の共通のものがある!

  • お金の管理ができず、封筒に入った現金や金融機関の証券などが部屋に散らばっている。
  • サイフに無造作に万札が入っており、無防備に各種の支払いをしている。
  • 新聞を複数購入している例が多い。
  • ベッドや布団の周りに食べ残しなどが散らばっている。→ 時間の経過とともにゴミが周辺に積み重なっていく。
  • トイレの掃除がなされておらず、水洗トイレの中が黒ずんでいる。
  • 風呂も沸かさなくなり、荷物置場となってくる。
  • 入浴もしなくなり、衣服も洗わず着ているので悪臭を放つようになる・・・等

幸いにも、Aさんの場合、心配した知人が親族に連絡し、親族から市役所への相談を経て最終的に後見人制度につなぐことができました。現在は成年後見人の支援で自宅を整理し、有料老人ホームに入居して静かな余生を過ごしています。


Bさんの場合 〜 慢性疾患で医療費増

ごく普通の会社員を経て退職したBさん(70歳)は年金も人並み以上あったのに、退職前からの慢性疾患にかかる治療費の支払いで予期せぬ経済的に苦しい老後になった例です。

もともと収入が少ない人が老後の生活の苦しさを訴えるのは昔からある例ですが、最近多いのが普通以上に暮らしてきた人の老後の家計の破綻です。就労収入がなくなり年金生活になった場合、ケガ・病気の治療代、介護の1割負担などの負担の積み重ねや、ちょっとの気持ちでサイフの紐を緩めることが、家計が破綻させることにつながると肝に銘じておきたいものです。

Bさんは、生活保護の申請をしたいと考えていましたが、自宅があり年金収入から考えると即保護を受けることは難しいため断念。何も無ければ悠々自適の暮らしに近い生活ができたのにと反省しきりのBさん。仮に離婚して年金分割するようなことになれば、年金収入も減ります。

Bさんの失敗は、セカンドライフを迎えたとき、これからは「高齢期の家計」という頭の切り替えができなかったことと、医療保険などの備えや退職までの預貯金等の蓄えが少なかったことです。収入が減っているのに支出も成り行きまかせでは、限られた蓄えが底をつくのに時間はかかりませんでした。


高齢単身世帯の増加が予想される!

単身者は増える傾向にありますが、中でも近年高齢単身世帯の増加が著しく、人生の後半のリスクを受けやすいのも人の目が届きにくい単身高齢者世帯と言えるでしょう。高齢期こそ、何らかの人とのつながりが必要になります。

例えば、先のAさんの場合、時々見舞ってくれる知人がおり、知人の知らせで動いてくれる親族がいました。つまりこれまで付き合いがあったということでしょう。
他に、勤務先の人が自宅を訪問して病気で倒れている人を発見し市役所につないでくれた例もありました。
高齢で単身になると親族と疎遠になりがちですが、高齢期こそ意識して普段から親族や友人などと連絡を取り合っておくことが、いざ問題が発生したときにも解決の糸口を見つけることに繋がるのです。

単身者に限らず、最近増えているのが人並みに暮らす賃貸アパートなどに入居している人からの「生活が苦しい」という訴えです。「持ち家」か「賃貸」かは、その人が抱える事情や考え方があるので他者が口を挟めません。但し、「賃貸」で暮らすと決めたら、就労収入が減る高齢期に恒常的支出が続くことを予想して、現役時から少しでも準備しておく気持ちも大切です。

単身世帯、中でも高齢者単身世帯の増加

コーヒーブレイク

ところでゴミ処理費用っていくらくらい必要かご存知でしょうか。部屋の広さ、階数、ゴミの量、ゴミの内容、業者、地区などで異なります。一般的に1K+少しの押し入れ的のゴミなら10万円くらい、3LDKくらいですと50万円前後かかるところもあります。あまりたくさんありすぎると、担当者もその都度分別するのが不可能なので、まだ使えそうな物も捨ててしまうことがあります。複数の業者で見積りを取るのは言うまでもありません。

一口にゴミと片付けますが、本人にとってはかけがえのない大切な思い出が詰まったものもあり捨てるには忍びないものもあります。しかし、現場で感傷に浸っていてはことが進みません。ゴミ処理に立ち会うときはいつも複雑な気持ちになります。

いずれにしても、これからは本当に良いものを少し購入して大切に使い、不要なものは少しずつ整理してシンプルに暮らすセカンドライフもいいのかも知れません。大量のゴミの山が無造作に捨てられていくのを見た私の感想です。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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