セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第12回:予想外の医療費が高齢期の暮らしを破綻させる!

国は、どこに住んでいても、その人にとり適切な医療・介護サービスが受けられることを目指すために社会保障改革に取り組んでいます。ただ、適切なサービスを割安で受けられるとは言っていないので要注意です。
多くの人は年金収入だけになったとき医療・介護サービスを受ける確率が高くなります。医療費が一定の額を超えたら超えた分は高額療養費で戻る(窓口負担は限度額までだ)から大した金額ではないだろうと思っていると請求書の額をみて驚きます。今回は、脳梗塞で倒れ療養型病院に入院中に、大たい骨を骨折したAさん(60代後半・一般)のケースで見てみましょう。


差額ベッド代、オムツ代などで支払い額が高額に

入院したときの病院への支払い額は、高額療養費制度があるので自己負担限度額のみ支払えばいいと思いがちですが、実際はプラス差額ベッド代・食事負担金・必要ならオムツ代・必要に応じて日常生活品リース代(1日1,950円)、たまに洗濯代(月2万円くらい)などが必要です(消費税別)。

Aさんの場合、骨折の手術後しばらく1人部屋でしたが駆けつけた親族の依頼で4人部屋に移れました。それでも差額ベッド代、オムツ代等で30万円弱かかりました。近くに親族もいないので日常生活品レンタル料もかかりました。実際にかかった医療費は約70万円でしたので高額療養費の自己負担限度額だけなら9万円弱ですが、Aさんの実際の自己負担費用はかなりのものです。

病院に支払う額は、=40万7,990円([1]+[2]+[3])+日常生活品レンタル代


過去5年間の入院時の自己負担費用 〜 「 1日あたりの自己負担費用 」

生命保険文化センターの調査によれば、自己負担費用(1日)の平均は16,000円。「10,000円〜15,000円未満」が23.3%と一番多く、「25,000円以上」も20.1%と高い割合を示しています。

※ 治療費・食事代・差額ベッド代等を含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。

ご存知でしたか!? 高額医療費の「多数該当」による自己負担額の軽減

1年(12ヶ月)の間に同一世帯で4回以上高額療養費に該当したときは(多数該当の場合)、4回目から44,400円(一般・自己負担限度額)を超えた分が高額療養費となり払い戻しされます。但し、入院中に保険者が変わった場合は、保険者が変わった時点で回数はリセットされるので要注意。高齢期は、健康保険から国民健康保険へ変わることもあり得るからです。

なお、平成24年4月より「限度額適用認定証」や、「高齢受給者証」および「後期高齢者医療被保険者証」を医療機関に示せば、窓口に支払う額が入院時・外来時とも限度額までとなります。


差額ベッド代は必ず支払う必要がある ?

実は、個室に入居すれば必ず差額ベッドを払う必要があるとは限らないことをご存じでしたでしょうか。

差額ベット代に関する厚生労働省通知によると、

  1. 1室に4床以下
  2. 1人当たり6.4u以上などの条件を満たした特別室(特別療養環境室)

の場合において差額ベッド代が発生します。
ですが、単に空きがない等病院側の理由だけで、本人がそれを希望していない場合は差額ベッド代の支払いは必要ないのです。
※万が一、入院をする際には病院に確認をされると良いと思います。

しかし、そうは言うものの現実はそう簡単ではありません。

Aさんのケースでみてみます。その後Aさんはリハビリ病院に転院が決まりました。骨折から2ヵ月以内の転院が条件で、転院にも優先順位があり骨折と脳梗塞が原因の転院では脳梗塞の人が優先されるとのこと。リハビリに早くとりかかれば治りもその分早いのが一般的です。

転院先のリハビリ病院の事前説明で、個室6,300円、2人部屋4,200円、3人部屋2,100円の料金の説明を受け、差額代の支払いが必要なケースにもAさんの親族は同意しました。リハビリ病院の差額代が発生しない部屋の入居にこだわると転院の機会を逃すことも、または転院時期が遅くなり回復が遅くなる可能性もあるからです。
このAさんのケースでは、早く入院をすることを希望したため、差額代が発生することにも同意し、差額代を支払うこととしました。

幸いにも2週間の待機でリハビリ病院の2人部屋に転院できましたが、差額ベッド代が少ない部屋があくまでしばらくの間、実質負担は最大で30万円くらい覚悟しておく必要がありそうです。
なお、費用は地域や病院で差があるようです。ただ、費用が安く治療が評判のリハビリ病院などは、待機者も多く希望したからといってすぐ入院は難しいのが現状です。


支出増のときホッと一息つけるのが保険収入

最近は、入院時に預かり金の支払いを求められます。Aさんの場合は20万円でした。病院も経営者ですから致し方ありませんが、高齢期の1回の支出は金額が大きく大変です。
そんなとき加入していた保険からの収入は嬉しいものです。その人が支払える範囲でいいので少しでも加入しておけば、医療保険からの一時金収入でホッと一息つけます。
1日5,000円でも×30日で150,000円(月)の収入。「若い時に気づかなかったが、ありがたかった」とは退院後のAさんの感想です。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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