セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第14回:超高齢者社会では若さがリスク 〜 高齢者施設の入居一時金などは75歳未満では割高

日本の総人口(定住外国人含)は1億2,780万人(2011年11月1日現在確定値)と前年同月に比べ26万3千人(0.21%)減少しましたが、65歳以上の人口は2,982万人と前年同月に比べ31万6千人(1.07%)増加し、総人口に対する65歳以上の割合は23.3%と過去最高となりました(総務省)。

急速な高齢化は介護業界にも活気を与え高齢者施設が増えつつあります。国は日々の生活や介護に不安を持つ『高齢単身・夫婦のみの世帯』を意識した24時間対応の介護サービスを組み合わせたしくみを2012年度から始めています。高齢者にとり選択肢は増えました。但し、比較的若い?高齢者にはまだまだ厳しい現実があります。今回は69歳のTさんの場合でお話しします。


年齢で決まる入居一時金と毎月の管理費等の額

家族がいないTさんは、両親亡き後自宅に1人で暮らしていました。高齢の遠い親類が1人田舎にいますが長いこと交流もありません。病気で倒れたTさんは現在「要介護2」、症状から1人暮らしは難しいと医療機関の相談員のアドバイスもあり、介護付有料老人ホームの入居を考え探しています。しかし、Tさんが60代後半ということから予想外の費用がかかることが分かりました。

病状に不安のTさんはいろいろ検討した結果、一時金も比較的安く24時間看護師が滞在する施設と、看護師は24時間常駐していないが、一時金が安く食事にも気配りがあるB施設が気に入りました。しかし、A施設の説明で75歳未満の人の入居一時金は75歳以上の人の1.4倍と聞き驚きました。また、B施設の入居一時金は安いけど、毎月の管理費は少し高めです。

仮に90歳になるまで長生きしたらお金が底を尽きます。60代と年齢が若いTさんは、できれば毎月の管理費などの費用もできるだけ安く抑えたい気持ちもあります。かといって施設の質も落としたくありません。難しい選択です。

A施設の料金例

プラン別 1 2 3 4
入居一時金 0円 980万円 490万円 1623.2万円
月額(家賃・管理費・食費) 334,000円 198,000円 266,000円 133,100円

※プラス、介護サービス利用料1割負担 + オムツ代+各自の医療費など3〜4万円ほど要

年齢別入居一時金の割増と償却機関

  65〜69歳 70歳〜74歳 75歳以上
入居金割増率 40%増 20%増 0%
償却期間 84か月 72か月 60か月

B施設の毎月の管理費等の額

74歳以下 75〜79歳 80〜84歳 84〜89歳 90〜94歳 95歳以上
278,000円 268,000円 258,000円 248,000円 238,000円 228,000円

※プラス、介護サービス利用料1割負担 + オムツ代+各自の医療費など3〜4万円ほど要
※入居一時金一律 80万円 (入居時償却)


Tさんと80歳の人が、90歳になるまで生存した場合の比較

A施設

  入居一時金 月管理費等 オムツ・医療代等※
Tさん69歳 1,372万円 4989.6万円 1,008万円 7369.6万円
80歳の人 980万円 2,376万円 480万円 3,836万円

※オムツ・医療代等は月4万円で計上

B施設

  入居一時金 月管理費等 オムツ・医療代等※
Tさん69歳 80万円 7005.6万円 1,008万円 8093.6万円
80歳の人 80万円 3,096万円 480万円 3,656万円

※オムツ・医療代等は月4万円で計上

介護付有料老人ホームの入居者の平均年令はおよそ84歳〜85歳、平均要介護度は3〜4くらいです。比較的費用の安い特別養護老人ホームに入所できればいいのですが、要介護度や地域事情もあり誰もが入所できません。Tさんのように頼る人もいない、1人暮らしが難しい人の場合、60代という若さは致命的です。Tさんは、偶数月に入金される年金と現在の預貯金での支払いを計画しています。


入居期間が長い分、費用が高額になる

Tさんが、仮に90歳になるまで後21年生存として必要準備額を計算してみました。現在の預貯金と年金収入だけが頼りです。年金額(手取)は月15万円ありますが、今後減る可能性もあります。将来要介護度の変化や医療の内容で不足額が増える可能性もあります。

高齢者施設に入居の年齢が、69歳からと80歳では69歳からが約1.9倍〜2.2倍高額になります。できるかぎり元気な期間を長くして要介護状態になる年齢を遅くできればベストですが、Tさんのように60代後半で要介護になるケースもあります。
やはり早いうちから取り崩せる現預金の積立と公的年金を少しでも増やす働き方、払い方の工夫、介護保険や個人年金保険などでの準備が求められます。

かなりゆとりがあると思っていたTさんですが、希望するA施設に入居するには約1,090万円不足します。もっと安い施設に妥協するか、それとも思い入れのある築20年以上の自宅売却代金を不足分にあてる決心が求められそうです。売却代金の額次第で現預金にゆとりが出ます。

Tさんは単身でしたので自宅売却も視野に入れての選択になりますが、夫婦の場合、配偶者の居場所も考慮する必要があり、自宅と施設の両方の費用が発生するので、資金計画はもっと厳しくなることも意識しておきましょう。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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