セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第15回:老い支度は、「心」と「お金」の備えから 〜 最後まで自分らしく生きるために

私自身がしっかり熟年世代になったせいか、最近同世代から「最後まで自分らしく生きるためのお知恵拝借」的なセミナー依頼が増えています。それなりに人生を謳歌しているからこそ、最後のときを迎えるまでの暮らしを充実させたいと思う人々が増えているのでしょう。逆に考えると、自己をあまり主張せず人生を全うした親世代の生き方を身近にみてきたからこそ、その反省も込めて「最後まで自分らしく生きたい!」と願う人が増えているとも受け取れます。今回は、私と母の経験も踏まえ自分らしく生きるには、それなりのお金と心の準備も大切という、ちょっと厳しいお話しをしましょう。


母の思い出

私の母はどこにでもいる子ども一筋の優しい母でしたが、今あらためて振り返ってみると自分がこうありたいと思う人生を全うした女性だったなーと思います。最後はガンで亡くなりましたが、万が一のときを考え、入院前夜に嫁いでいた長女の私を呼び寄せ以下のことを託し翌朝入院しました。当時、父も同居していましたが、仕事一筋でお金のことはすべて母任せだったので、実務面で信頼できる娘に託したのでしょう。

  1. 母名義の通帳を私にみせ、これで病院等の支払いをすること。
  2. 医者に治療しても治らないと言われたら延命治療はいらないこと。
  3. 最後は病院でなく自宅で死にたいこと。
  4. その他の通帳等の管理をして欲しいこと。
  5. お父さんの面倒を時々見に来てほしいこと。

「余命3か月」の告知を医師から受けたあと病室に戻る長い廊下をボー然と歩きながら、頭の中は母の意思をどう実行したらいいのか考えていました。まずは、医師の説得と自宅にもどる車の手配です。母はガンが骨に転移して体が硬直しており、座ることができなかったからです。ただ、母の思いを実行に移すことに私達夫婦の迷いはありませんでした。

医師は初め、帰宅は無理といいましたが、母の意思が堅いことを知ると近くの医師が往診してくれるならと了解してくれました。大型第1種の免許を持つ夫が借りた大型車に担架に載せたままの母を乗せ、自宅まで小一時間ある道のりをゆっくり運転しました。

ちょうど連休のころ、帰宅した母が1階のりビングに寝て庭のボタンの花を嬉しそうに見ていた姿を今でも思いだします。母は、自宅に戻って2週間後に亡くなりました。私に感謝の言葉を残して。


お任せでなく、ありたい生き方を伝えておく

母の最後から、自分がどう生きたいのか信頼する人に伝えておく大切さを学びました。
何も聞いてなかったら医師に母の気持ちをここまで信念を持って伝えることもできませんでした。医者の費用も母が伝えておいてくれたので、気兼ねなく支払うことができました。世話や介護をする側も、母の医療費だから母の通帳から払っていいと思っても、他の兄妹の手前行動に移していいのか迷うことが多々あるからです。

また、人に頼むということは、頼まれた人の人生の大事な時間を使う認識も必要ということを知りました。できれば医療費なども託す人の分は事前に準備しておくことも大切です。プラス親子なら感謝のことばを添えれば十分でしょう。

仮に、親族に託せない人などは、成年後見制度などを利用して第3者に頼めます。但し、成年後見制度は託した人への報酬(費用)が必要なので、利用をためらう人もいます。
最後まで自分らしく生きるには、自分のために動いてくれる人への報酬も、自分が快適に生きるためのコストだと分かってきます。その感覚があればこそ感謝の言葉も自然にでてくるのですね。


エンディングノートの作成のススメ

あなたが最後まで自分らしく生きるために、あなたの記録や気持ちを、元気なうちに支えてくれる人にメッセージとして残しておくといいでしょう。もしもの場合、支える人も、あなたの気持ちに沿った対応ができる筈です。書き方は自由できまりはありません。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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