セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第17回:定年後の暮らしの満足度 〜 世帯の豊かさと各人が自由に使える金額で決まる!

定年退職後のプランを考えるとき、他の人はどうやっているのかと統計数値が気になるところです。そこで、夫婦共働き世帯、高齢者世帯などの収入と支出の統計や世帯での預貯金額などが参考になります。但し、世帯の赤字が少ない、預貯金額の取り崩し額が少ないなどで豊かな世帯イコール各人の満足度とは必ずしも一致しません。今回は、相談の現場から見えてくるリタイア後の夫または妻の不満と事前対策について考えてみましょう。まずは以下の平均値で老後の暮らしを確認します。


世帯主60歳以上の2人以上の高齢無職世帯は月に5万5,870円の赤字

1ヵ月の実収入は21万8,388円で8割強が公的年金などの社会保障給付、税金や社会保険料を控除した可処分所得(手取り収入)は18万7,385円。消費支出は24万5,870円、赤字分の5万8,485円を貯蓄などから取り崩す必要があります。


世帯主60歳以上の2人以上の世帯の貯蓄残高

退職金が支給される高齢者の貯蓄残高の平均値は2,286万円、中央値1,563万円とかなり高い。平均的暮らしまたはそれ以上の人が毎月の暮らしで預貯金を取り崩したとしても、無理をしなければ何とか世帯として暮らせる金額が統計から見えてきそうです。しかし、各個人としてみると、甘くない以下の事例のような現実もあります。


おサイフは、誰が管理していますか?

夫婦が結婚したときから家計の主導権争いが始まっていると言っても過言ではありません。よくあるのが夫婦のうちどちらかが主に家計を管理する例です。片働き(妻がパートなども含む)などの夫婦で、夫が働いたお金を妻が管理し、妻が日常生活費のやりくりをすると共に夫にお小遣いを渡す、または、夫が働いたお金を夫が管理し、日常生活に必要なお金のみ妻に渡す例です。
共働きの場合は、2人とも収入があり金額に差があるため管理の仕方はもっと複雑になります。それでも、現役時代は、家族のためという大義名分で収入の一部または全部を出し合ってやりくりするのが一般的ですが、年金収入しかなくなった場合、意外とお金の管理に無頓着なのが共働き夫婦です。
最近相談で少しずつ増えているのが、夫婦の間での「年金」の所有権の問題です。ご存知のように公的年金は個人資産なので、夫婦と言っても、どんなに年金額が少なくても請求者の通帳の口座に年金が振り込まれます。しかし、その後の年金の行方が問題なのです。これまでのお金の管理の仕方が、リタイア後の年金の管理に影響してくる相談もあるからです。

夫から生活費のみ毎月もらっていたA子さんの場合

A子さんは60歳になり年金請求しても、受給できる年金は夫の管理下におかれ、これまでどおり夫から生活費を渡される生活が続くので楽しみがないと年金請求にも気乗りがしません。夫に生活費の明細も渡し、「へそくり」する余裕もない様です。やっと子育てから開放されて夫婦二人の気楽な生活になったのに、肝心のお金が自由になりません。一方、世帯のお金を全部預かる夫は定年後も自由にお金を使っており不満は募るばかりです。併せて我が家のお金の総額もわからず不安です。


妻からお小遣いのみもらっていたB夫さんの場合

B夫さんは年金生活者になっても妻からお小遣いをもらって暮らしています。上記のA子さんが夫からもらう生活費と異なり小遣いなので全額自由に使えます。できればもう少し金額を増やして欲しい悩みがありますが、働けばその分小遣いも増えます。限られた収入からB夫さんにお小遣いを渡す妻の家計管理の大変さは、我が家のお金の総額次第でしょう。但し、大きなお金の管理は夫婦でしており、B夫さんに不満は努力次第で解決できそうです。


経済的に自立し共働きだったC子(D夫)さんの場合

共働き夫婦で多いのが配偶者の年金額を知らないケースです。ときに配偶者が年金請求したかどうかにも関心がない人がいます。逆に知らなくても生活できるからでしょうか。お互いの預貯金額も知らないことが多いのがこのケースです。一般生活者である私からみると何とも羨ましい限りです。確かに、C子さん・D夫さん夫婦のように経済的に自立(自律)することは大切ですが、単に無関心だけの自立?は避けたいものです。イザというとき、予想外にお金がなかったと慌てないためにも。


年金分割を請求しないE子さんの場合

夫婦が離婚した場合、夫婦の婚姻期間に応じて厚生年金(保険料納付記録)の分割を受けられる離婚時の年金分割が平成19年4月から施行されています。しかし、当然に年金分割の請求をできるのにE子さん(60歳)は請求しませんでした。「何もそこまで・・」という夫の言い分にE子さんは同意したのです。E子さんのこれからの生活は相当困窮することが明白です。既に年金を受給中のE子さんは年金分割の改定請求をすれば翌月分から分割年金が加算となり生活も今より楽になるはずでした。財産分与も慰謝料もほとんどなしに離婚した相手に優しすぎる妻(夫にとり都合のいい妻)が多いのが同じ女性として残念です。


「私の年金」を笑って話せるために

年金で質問が多いのが「私の年金は、いつから、いくらもらえますか?」。女性が考えている「私の年金」には、妻自身の「私の年金」と、「夫が受給する年金」と、夫が死亡して受給できる「遺族年金」が含まれている気がします。女性は男性より年金額も一般的に少なく、長生きなので、長い老後が心配という気持ちが伝わってきます。厳しい相談者の事情を聞くことが増えた今、したたかさも含め「私の年金」を笑いながら話せる人は、幸せな女性かもしれないとつくづく感じる昨今です。

何れにしても、お金の管理の仕方やお金に対する考え方は、人生の節目のとききちんと夫婦で話しあう必要があります。

人生の節目とは、結婚したとき、子育てが終了した時、夫婦の働き方が変わった時、年金を受給したとき、離婚しそうなとき、何か疑問が生じたときなど、夫婦で話し合ってご自分たちで決めればいいでしょう。生きていくのに大切なお金のことをクリーンにして納得すれば、次の実践の方向性も見えてきます。何より、これからの長いご自分の人生を大切にするために・・・・。


執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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