セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第19回:複雑な繰上げ支給 ・ 報酬比例部分の支給開始61〜64歳からの人
       〜 昭和28年4月2日以降(女性は5年遅れ)生まれ

公的年金の将来に対する不安、または予想より少ない年金額への失望からか、65歳から支給される老齢基礎年金を65歳前に受け取る「繰上げ制度」の相談が増えています。
現在、65歳から国民年金のみ支給される人、65歳前の報酬比例部分(生年月日により報酬比例部分と定額部分)を受け取る人いずれも、65歳から支給される老齢基礎年金の繰上げ請求は可能です。

但し、平成25年4月に60歳になる男性から報酬比例部分の支給開始年齢が61歳から64歳に引上げられ、いわゆる年金空白期間ができます。年金がない期間を乗り切る対策として『繰上げ制度』の利用者も増えそうです。ただ、今回の繰上げ制度のしくみはちょっと複雑です。今回は、61歳以降報酬比例部分を受給できる人が繰上げ請求をした場合で考えてみましょう。

年金空白期間が来る・・・。


報酬比例部分が61歳から64歳に引上げられる

60歳代前半に支給されている特別支給の老齢厚生年金は、段階的に支給開始年齢が引き上げられています。平成24年度現在は、下図(※)のように60歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されています(男性)。

厚生年金の受給開始年齢の図


繰上げ制度を利用した場合の年金額 〜昭和16年4月2日生まれ以降

本来65歳から支給される老齢基礎年金は、65歳前の希望するときから受けることができます。これを繰上げ制度といいます。但し、繰上げた月数により年金額が0.5%減額されます。老齢基礎年金の繰上げには、全部繰上げと一部繰上げがあり、60歳から報酬比例部分のみを受ける人は、全部繰上げとなります。以上は、これまでの繰上げ制度です。

繰上げした場合の減額率は、繰上げた月数X0.5%

年齢 60歳0ヵ月 61歳0ヵ月 62歳0ヵ月 63歳0ヵ月 64歳0ヵ月
減額率 30% 24% 18% 12% 6%
支給率 70% 76% 82% 88% 94%

年金空白期間がある人の、繰上げ制度が変わります

厚生年金の支給開始年齢の引上げにより、昭和28年4月2日〜36年4月1日(女性は昭和33年4月2日〜41年4月1日)生まれは、61歳〜64歳に報酬比例部分を受けるため、繰上げ制度のしくみが変わります。今回は、報酬比例部分が61歳に引き上げられる昭和28年4月2日〜30年4月1日(女性は昭和33年4月2日〜35年4月1日)生まれのケースで考えてみます。セカンドライフの手取り額を把握するためにも、年金額のしくみを知りおよその年金額をイメージしておくことは大切だからです。

事例1 < 現在の繰上げ制度 >
60歳0ヵ月で老齢基礎年金を繰上げた場合
昭和24年4月2日〜28年4月1日生まれ(男性)

1)60歳から受ける報酬比例部分Aと65歳からの老齢基礎年金がある場合

60歳から受ける報酬比例部分の年金額は減額されずそのままです。本来65歳から受ける老齢基礎年金は、60歳0ヵ月で繰上げ請求するので5年(60月)繰上げることになり、60月X0.5%=30%減となります。

60歳から受ける報酬比例部分Aと65歳からの老齢基礎年金がある場合の図


事例2 < 平成25年度から始まる、 新しい繰上げ制度 >
60歳0ヵ月で繰り上げた場合
昭和28年4月2日〜30年4月1日生まれ(男性)

2)61歳から受ける報酬比例部分Bと65歳からの老齢基礎年金がある場合

61歳から報酬比例部分を受ける人が60歳0ヵ月で老齢厚生年金(報酬比例部分)を繰上げ請求する場合、65歳からの老齢基礎年金も同時に繰上げます。老齢厚生年金(報酬比例部分)は1年(12月)繰上げることになり、12月?0.5%=6%の減、老齢基礎年金は5年(60月)繰上げることになり、0.5%X60=30%減となります。

61歳から受ける報酬比例部分Bと65歳からの老齢基礎年金がある場合の図

※一見報酬比例部分を繰上げる形となっていますが法律上は、65歳からの老齢厚生年金を繰上げるしくみです。報酬比例部分と65歳からの老齢厚生年金の額は同額ではありませんが、年金額のイメージを知っていただくために、今回は簡単に記しています。以下の事例も同じ。


事例3 60歳0ヵ月で繰り上げた場合
昭和30年4月2日〜36年4月1日生まれ(男性)
 

3)62歳〜64歳から受ける報酬比例部分とC〜Eと65歳からの老齢基礎年金がある場合

62歳〜64歳に報酬比例部分が支給される人が、60歳0ヵ月で繰上げ請求した場合も上記と考え方は同じです。本来の報酬比例部分を受けられる年齢が62歳〜64歳なので、老齢厚生年金(報酬比例部分)の減額率は異なります。例えば、報酬比例部分が62歳から受ける人が60歳0ヵ月で繰上げ請求する場合、2年(24月)繰上げることになり、24月X0.5%=12%減、老齢基礎年金は5年(60月)繰上げることになり、60月X0.5%=30%減となります。

62歳〜64歳から受ける報酬比例部分とC〜Eと65歳からの老齢基礎年金がある場合の図


事例4 61歳0ヵ月で老齢基礎年金を繰上げた場合
昭和28年4月2日〜30年4月1日生まれ(男性)
 

4)61歳から受ける報酬比例部分Bと老65歳からの齢基礎年金がある場合

報酬比例部分が61歳から支給される人が、61歳になった後は老齢基礎年金だけをいつでも繰上げることができます。仮に、老齢基礎年金を61歳0ヵ月で繰上げ請求する場合、老齢基礎年金は4年(48月)繰上げることになり、48月X0.5%=24%減となります。


繰上げ請求は今まで以上に慎重に! 

寿命が延びた分、セカンドライフ期間は長くなっています。61歳〜64歳から報酬比例部分を受ける世代は、これまでの繰上げ制度と異なり報酬比例部分を受ける前に繰上げ請求すると、老齢厚生年金と老齢基礎年金両方が生涯減額になるので、リスクは大きいでしょう。なお、65歳前に繰上げ請求した場合、障害年金が受けられなくなるのはこれまでと同じです。

自分1人で不安・心配と悩むより、家族で話しあい協力しあって、今から対策を立てれば、家庭経済の明るい未来も見えてくるね

ご自分の報酬比例部分(厚生年金)の支給開始年齢を知り、希望する年齢まで働くために欠かせない健康維持と、仕事面のスキルアップを今から心がけておくとよいでしょう。併せて収入がある現役時代から年金空白期間の暮らしを支える個人年金保険や預貯金などの準備も欠かせません。

既に年金を受給中の我が家は、偶数月の15日に黙っていても前2ヵ月分ずつ入金される年金の有り難さは実感ずみです。年金を受給していない世代は、年金空白期間の怖さを実感できないかもしれませんが、そのときになって『気づく』では手遅れになります。
まずは、将来の現実を知るために、年金空白期間を含めた家計の収支表やキャリアプラン表を家族で話し合い作成してみるとよいでしょう。家計管理の危機感を家族で共有することからスタートが安定家経済を営むコツかもしれません。


執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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