セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第26回:「お互い自由に暮らしてきたと思っていたが、夫のこと何にも知らなかった!」
       〜 共働き夫婦だったある妻の独り言から

若いときは多くの男性や女性も子育てや仕事を一生懸命こなすのに精一杯、厳しい雇用情勢を考え退職後もできる限り働き続けるために、稼げる能力のスキルアップをしておきたいと考える人も増えています。世帯の収入を増やすため、または生き甲斐を求めて働く女性も増えています。いずれも、長いセカンドライフ期間の収入と生き甲斐などで豊かにするための発想です。
今回は、私たちが見落としがちな人生の終末のことも意識しておく大切さについてお話ししましょう。共働きだった夫を亡くした妻A子さんからお聞きした「夫のこと何も知らなかった!」の後悔の一言から見えてきたお話しです。働く女性が増え、仕事に対する厳しさも知り、夫に理解ある経済的に恵まれた妻も増えており、今後増えそうな相談です。
これからセカンドライフを迎える人は、セカンドライフのすごし方の備えは今から充分間に合いそうです。

夫婦だから何でも相手のこと知ってるとは限らないのね!お互い自由に暮らしてきたけど、最後になって夫婦の意思疎通が欠けていたことを知らされたわ


夫婦ともに働いている世帯は、夫婦のいる一般世帯の45.4%

統計によれば、下図のように働く男性の数は頭打ちですが、働く女性の数は順調に増えています。今後、平成26年8月までに施行が予定されている短時間労働者の厚生年金等の適用拡大を機に、働く女性が増える可能性も有りそうです。ちなみに夫婦とも就業者世帯は1267.6万世帯、夫婦のいる一般世帯の45.4%です。なお、夫が就業者の世帯に限れば、夫婦とも就業者世帯は、59.8%、平成7年以降一貫して増加しています。

■男女の雇用率の推移・男性は台形、女性はM字型

年齢(5歳階級)、男女別労働力率−全国(昭和60年、平成17年、22年)

■夫婦の就業の内容

  一般世帯※ 夫が就業 妻が就業
平成7年 28,685 24,840 13,474 (47.1%) 【54.2%】
平成12年 29,292 23,792 13,139 (45.3%) 【55.2%】
平成17年 29,338 22,671 13,034 (45.2%) 【57.5%】
平成22年 29,136 21,184 12,676 (45.4%) 【59.8%】

総務省 夫の収入と妻の就業率について 平成22年

※総世帯から老人ホームなどの社会施設の入居者等から成る「施設等の世帯」を除く
( )は夫婦ともに就業者の一般世帯に対する割合。
【 】は夫婦とも就業者の就業者世帯に対する割合。
端数処理上%は一致せず

■正規の職員・従業員と非正規の職員・従業員として働いている人の割合

従業上の地位、男女別15歳以上雇用者数−全国(平成22年)


漠然と暮らしていると、本当に大切なことに気がつかないことも!

年金受給年齢になっている夫婦共働きの夫婦の相談を受けて驚くのは、配偶者の年金額を知らない人が多いことです。もっと驚くことは、年金を請求した本人が年金の請求をしたことさえ忘れている人があることです。60歳以降働いている場合、給与等と年金月額で年金の一部または全額停止(在職老齢年金)されていることも関係しているかも知れません。本人が忘れているわけですから、配偶者が知らないのも当然です。
相談者たちのお話しから想像すると、長い間お互い働いて得た年金はお互いの個人資産だから、配偶者でも相手の財産に立ち入れない雰囲気があるようです。また、共働きだった人は、配偶者の年金には触れない分、自分の年金は自由に使いたいという思惑もありそうです。いずれにしても配偶者と自分の年金も考慮して家計を回さざるを得ない、ごく普通の暮らしをしている我が家から想像できない寛大な家計と言えそうです。

退職後のプランニングは退職したときに考えるのでは間に合いません。年齢を重ねていけば夫婦共働きもいつかは片働き、夫婦無職世帯になります。本当の高齢期のイメージを2人で共有しておく必要があります。一般的に共働き世帯は夫婦共長生きなら公的年金も多く、退職金も多く、家計管理をきちんとしておけば蓄えもそれなりにあります。
但し、高齢期の満足度はお金や生き甲斐だけで決まらないことも知っておきましょう。

高齢無職世帯(夫婦とも60歳以上)の家計収支 総務省 平成24年


夫退職後、働いていたA子さんの場合 〜「もっと話し合っておけばよかった!」

長年夫婦共働きで頑張ってきたA子さんの場合でお話しします。会社員だった夫は60歳で退職後、長年の夢だった釣りザンマイの生活を田舎の実家で満喫していました。
夫の生活費はもちろん夫の年金で賄えます。一方妻のA子さんは60歳で退職まであと3年、自宅で今の仕事を続ける予定です。夫が退職後、田舎の実家で暮らしたがっていることは薄々知っていましたが、蓄えと自分の収入もあり当面の生活に困る訳でもないので、田舎行きには反対も干渉もしませんでした。傍からみれば、お互いの自由を認めあい、その自由が可能になる家計状態と羨ましい限りの暮らしです。しかし、田舎暮らしが始まって2年で夫に重い病気が判明、急遽帰宅しましたが治療の甲斐もなく亡くなりました。

夫に死なれてみて1人になったとき、A子さんの胸によぎるのは「夫と一緒に暮らした月日は長かったけど、夫のこと何も知らなかった・・」という思いです。
夫が何を大切にしていたのか、釣り以外にどんなことが好きだったのか、子どもの将来のことどう感じていたのか、夫婦の将来のことどう思っていたのかなど。
何より残念だったのは、病院に入院中に看病したときも本当に知りたいことは聞けずじまいだったこと。夫が病気を治すために手術は積極的にして欲しいのか、手術はほどほどにして自分らしく病気と向き合いたいのか、延命治療をして欲しいのか、いらないのか。最後は病院で迎えたいのか、自宅で死にたいのかなど、病気と戦っている本人に直接聞くのは気の毒で、本当に重要な夫の本心を何も聞けず見送ってしまったことへの後悔の思いがA子さんの短い言葉から溢れていました。

本当に大切なことを気軽に話せるときに、話しあっておけば良かった!イザというときって、本当に知りたいことが聞けないのね。

最後にA子さんが言われた「もっと、夫としっかり向き合っていろんなこと話しておけば良かった」という言葉が胸にジーンときました。私たちも人ごとではありません。人生の終わりはいつ訪れるか分かりません。最後まで大切な人と豊かに満足した人生を過ごしたいなら、自分には関係ない、忙しい、終末期のことなど聞きにくいなどと言い訳せず、笑って話せる健康なときに、お互いの本音を相手に伝えておくといいでしょう。


執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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