セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第28回:高齢者の財産を狙う親族や専門家が増えている!
      〜 備えは必要だが、お金を持っていても怖い時代

最近、成年後見制度を利用している判断能力が不十分な人の財産を横領する成年後見人の弁護士、本人の株式を無断で売却し投資信託を購入した証券会社の社員、親の年金などの財産を勝手に使い込む親族などの報道が相次いでいます。
なかでも判断能力が衰えた人などを支援する成年後見制度は、平成12年4月に施行から14年目に入り利用者も増える中、本来私たちを守ってくれる立場の専門家のトラブルが増えています。本人も家族も予期せぬトラブルで、多額の金融資産や自宅などの不動産は、一瞬のうちに失うこともあります。今回は、知っておきたい成年後見制度の周辺トラブルについてお話しします。

判断能力が衰えた高齢者などの財産管理などを行う成年後見人が、高齢者の財産を横領する事件が多発、いったい誰を信じたらいいの!


高齢女性の「預かり金」を着服

報道によれば、高齢女性の後見人であるA弁護士が、女性所有の不動産を売却したお金の一部を着服、その他女性の口座から自分の口座に移した金額を横領したとのこと。成年後見人のB弁護士は、女性所有の不動産を売却したお金を自分の口座に入金させて横領したとのこと。いずれの弁護士も金銭的に困っていたようです。

高齢女性の「預かり金」を着服

現在、成年後見人になった人は、金融機関などで成年後見人としての手続きをすることで、家庭裁判所の許可なしに本人のお金を引き出せます。財産の内容は原則1年ごとに家庭裁判所(家裁)に報告義務があります。実際に成年後見人をしている私は家裁から決められた年1回の報告書提出月に必ず提出していますが、成年後見人の中には1年を超えて報告またはしていない人もいるようです。報告が遅れれば、家裁が横領などの不正をみつけるのも遅れます。不正の発見が遅れれば、それだけ被害額も大きくなりがちと言う訳です。

家裁には成年後見人の監督義務がありますが、増え続ける後見人の選任件数や不正に家裁の対応が間に合わないのが現実とのこと。最高裁判所は平成25年4月から裁判官を20人から30人規模で増やす方針を決めています。相次ぐ不祥事の発覚により、東京家裁は事案により2年に一度の提出でも認めていた報告書の毎年提出を徹底化するようです。

成年後見人と本人との関係 〜 初めて専門職(51.5%)が親族(48.5%)を超えた
成年後見事件概況 平成24年1月〜12月


改めて気づく成年後見人の倫理 〜「資格」でなく「人」で決まる!

成年後見人は親族や第3者など誰でなれますし、1人でも複数でも法人でも可能です。但し、 待ったなしで増え続ける高齢者、市民後見人が増えつつあるとは言え、家族関係の希薄化やトラブルを抱えた人で多額な資産を持っている人の財産管理は、第3者である専門職に頼らざるを得ないこともあります。私も第3者後見人として成年後見人を受任していますが、今回の報道で改めて成年後見人という仕事の重さを感じています。対象となる本人の判断能力が不十分な訳ですから、よほど成年後見人(支援する側)が自分を律しないと何でもありの世界になってしまうからです。基本的なレベルの知識は必要だけど最終的には成年後見人の「倫理感」次第だということを!

弁護士に限らずこれまでも他士業の不祥事が報道されており、改めて「資格」で判断でなく「人」を見る目の必要性に気づかされました。しかし、判断能力が不十分な本人とその家族などにとり、人を見る目が試されると「言うのは簡単ですが、行うのは難しい」世界です。だからこそ家裁の監督責任も試されています。それに関連する新聞記事を以下にご紹介します。


「賠償責任保險」に加入していた弁護士が、損害保險会社を訴えた例

知的障害のあるC子さんの成年後見人であるD男がC子さんの預貯金を横領し、C子さんがD男を監督していた「E弁護士」とE弁護士を選任した「家庭裁判所」を訴えた例です。

E弁護士は加入していた成年後見に関する「賠償損害保險」で損害を埋めるつもりでしたが、監督をきちんとしていたらD男の不正は見抜けたと、損害保険会社は保険金支払いを拒否。そこでE弁護士は保険に加入していた損害保険会社を訴えました。

平成25年春の判決は、E弁護士のみに賠償を命じ、保険会社に保険金の支払いを認めました。とりあえずE弁護士は一安心ですが、保険会社は控訴中です。E弁護士は自分が不正をした訳ではありませんが、監督責任を問われた例です。相つぐ不祥事に専門家といえど、きちんと仕事をする人としない人の差別化がされるというわけです。今までは成年後見制度の浸透に力を入れてきましたが、今後は事案の中身が問われるときを迎えつつあると言えるでしょう(読売新聞 平成25年6月22日より)。

「賠償責任保險」に加入していた弁護士が、損害保險会社を訴えた例

※弁護士賠償責任保険とは、弁護士業務の過誤により依頼した者などに経済的損害を与えた場合の賠償責任をカバーする保険。


狙われている高齢者などのお金

統計によれば、世帯主が60歳以上の2人以上の世帯では、貯蓄残高が高く2500万円以上の世帯は全体の39.1%、2人以上の世帯全体の約1.5倍となっています。高齢者のお金が狙われやすい理由でしょう。

世帯主が60歳以上の世帯の貯蓄現在高階級別世帯分布

判断能力が不十分な高齢者などを支援する成年後見制度は素晴らしい制度ですが、今まさに支援者の「質」が問われています。上図のとおり、高齢期における預貯金などの資産格差は大きく、一部の人はかなりの資産家です。不動産を含め資産家ほど被害額が多くなりがちですが、逆に貯蓄額が少ないケースの被害はより深刻です。いずれにしても判断能力が衰えたときの高齢期の防御にも限界があります。最後まで自分の財産を守りきる当たり前ことさえ、大変な時代になってきたなーと言うのが私の実感です。セカンドライフも安穏としてばかりはいられませんね。支援する人づくりが制度のしくみづくりや運用に早く追いついて欲しいと期待するばかりです。


執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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