セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第33回:お一人さまのセカンドライフ
       〜 将来の現実に不安を感じ始めた人が増加?

最近、「成年後見制度」についてお話しをして欲しいという行政からのセミナー依頼が増えています。25年12月初めにお話しした都内区役所の募集定員は400名、メインターゲットは40代〜50代の男性、家族で成年後見制度を知る機会にしたいと日曜日開催の効果か、広い庁舎ホームはほぼ満席でした。ただ、当日参加者は主催者側の意図に反し、60歳以上の方が大半だったのが残念。多くの職員が、日曜出勤で熱心に対応されていたのが印象的でした。

2月には、市の高齢者教養講座で「お一人さまの老後を考える〜成年後見制度について知ろう!」を話す予定です。制度に対する力の入れ方は地域で温度差がありますが、地道な広報を続ける意味の大切さは私も感じています。

その意味で、12月にNHKから放送された「孤立する認知症高齢者」への反響の多さは、将来のセカンドライフの現実に目を向け始めた人の増加と言う点で嬉しい限りです。今回は、統計を参考に、日頃の相談の現場からかいま見える、お一人さまの現実などお話ししたいと思います。

長生きになった分、セカンドライフも長くなる。増え続ける高齢者の全てが、必ずしも豊かに暮らしているわけではない実態も明るみになってきたね。生き方は人それぞれ。ただ、一人暮らしの実態を知っておくのもソンはないかも・・・


高齢化率 24.1%に上昇、高齢化は全国的に広がる見込!

我が国の平均寿命は約40年後には、男性84.19歳、女性90.93歳まで伸びると見込まれています。平成24年現在の高齢化率が高いのは秋田県で30.7%、低いのは沖縄県の17.7%ですが、将来的には全国的な広がりが見込まれています。

平成24年10月1日現在、65歳以上の高齢者は、過去最高の3,079万人(前年2,975万人)となり、総人口1億2,752万人に対する割合(高齢化率)は、24.1%(前年23.3%)。総人口の5%未満が高齢者(昭和25年)だったときからみれば、大幅な増加率です。

団塊の世代が65歳以上となる平成27年には3,395万人、75歳以上となる平成37年には3,657万人になると予想されています。団塊ジュニア(現在40代半ば)も待機しています。

人生が長くなれば、配偶者がいた人もいつか一人です。寿命は年齢の順番にくるとは限らず、セカンドライフの怖さは人ごとではありません。表面化した老後の実態をしっかり見ておきたいものです。


高齢者増〜団塊世代と団塊ジュニアの生き方が鍵かも

高齢化を考える時、話題になるのが半端でない人数の団塊世代(昭和22年〜24年生まれ)と、団塊ジュニア(昭和46年〜49年生まれ)たちの動向です。高齢期の入り口にいる団塊世代の生き方と40代のジュニアたちが親世代の生き方をどう活かすか楽しみです。いずれにしても、現在の高齢者がおかれている現実から目が離せません。


高齢者人口の対前年度増加数の推移

※総務省「国勢調査」「人口推計」(各年10月1日現在)より内閣府作成


65歳以上の高齢者のいる世帯は全体の4割、そのうち単独・夫婦のみ世帯が過半数

65歳以上の一人暮らしの高齢者が年々増えています。昭和55年には男性約19万人(4.3%)、女性約69万人(11.2%)でしたが、平成22年には男性約139万人(11.1%)、女性約341万人(20.3%)。高齢者人口に対する単身男性の伸びが目立ちます。( )は高齢者人口に占める割合。

同じ高齢単身者でも、過去の生き方、男女の特性の違いなどで抱える悩みも異なります。そして、統計から見えてくるのは、男性の方がより深刻な問題を抱えていることです。


一人暮らし高齢者の動向

※平成22年までは総務省「国勢調査」、平成27年以降は国立社会保障・人口問題研究所
    「日本の世帯数の将来推計(平成25(2013)年1月推計)」、「日本の将来推計人口(平成24(2012)年1月推計)」
注1:「一人暮らし」とは、上記の調査・推計における「単独調査」のことを指す。
注2:棒グラフ上の(  )内は65歳以上の一人暮らし高齢者の男女計
注3:四捨五入のため合計は必ずしも一致しない。


女性は、生き甲斐のレベルが高く、人づきあいも上手?

高齢者施設見学で感じるのは、認知症になっても男性は口数が少ない人が多いということ。ずっと一線で働いてきた男性の多くは、日常のちょっとしたことを話題にすることが苦手の様です。実際、私の仕事仲間と話していても、評価の世界で働いてきた習性が抜けない人に多く接します。例えば、単なるカラオケの趣味でも、上手とか下手など評価しがちですが、単に歌うことを楽しむという選択肢があってもいいと女性の私は思うのです。

一人であろうと家族がいようと、地域や家庭に「居場所」をみつけられるかどうかがセカンドライフの充実感に関係します。男女に限らず、ずっと一人で生きてきた人は、いつも自分主体で生きてこられた分、家族や周りから受けるたくさんの気づきに接するチャンスを逃している可能性もあります。会社の人間関係がずっと続くと思っている人がいますが、退職後付き合いにかけるお金と体力の減少と共に疎遠になりがちです。


生きがいの程度

※内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年)
注:対象は、全国60歳以上の男女


近所づきあいの程度

※内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」(平成22年)
注:対象は60歳以上の男女


「孤独死」を身近な問題と感じる単身者は4割超

誰に看取られることなく亡くなったあと発見される孤独死を、身近な問題と感じる60歳以上の高齢者は2割未満ですが、単身世帯では4割超感じています。腐乱死体を数ヶ月後発見した遺族が年金請求するケースもたまに発生しています。誰にも楽しく生きたときがあったろうにと思うと、人生最期のときの侘びしさを感じるのは私だけでしょうか。

孤独死(※)を身近な問題と感じるものの場合

※内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」(平成24年)
注:対象は60歳以上の男女
本調査における「孤独死」の定義は「誰にも看取られることなく亡くなったあとに発見される死」


単身男性こそ、老後の危機意識を早めに持っておきたい!

企業や組合などで開催するライフプランセミナーなどの受講者のうち、「単身者」の割合が増えています。ずっと独身、死別、離婚と理由は様々ですが、その数に驚くことが多々あります。もはや標準世帯のプランニングの考え方だけでは対応できない状況です。

セミナーをしていつも気になるのは、年間の収入と支出(キャッシュフロー)表、将来の夢プラン(ライフイベント)表のワーク作業時、単身者の多くは手持ち無沙汰ぎみなことです。

高齢者の相談を受けている私など、単身で高齢期を生き延びる大変さを身にしみて分かっており、予備軍ともいえる人たちの無関心さは不思議です。情報が入って来ないのでしょう。

ずっと一人で生きていく覚悟なら、自分のこと、別居または同居の両親のことをイメージして、これからの仕事や暮らし、趣味などに思いを巡らす機会にしていただけると嬉しいのですが、中々手が進みません。まだ若い現役時代でこれですから、退職後、自宅にひきこもりになったらどうなるかと思うと人ごとながら心配です。

東京23区内で自宅で死亡した65歳以上の一人暮らしの者

※東京都福祉保険局東京都監察医務院
「東京都23区内における一人暮らしの者の死亡者数の推移」
注:平成24年は速報値

単身居住者で死亡から相当期間経過後に発見された件数

※(独)都市再生機構が運営管理する賃貸住宅で、「団地内で発生した死亡事故のうち、病死又は変死の一態様で、死亡時に単身居住している賃貸人が、誰にも看取られることなく賃貸住宅内で死亡し、かつ相当期間(1週間を超えて)発見されなかった事故(ただし、家族や知人による見守りが日常的になされていたことが明らかな場合、自殺の場合及び他殺の場合は除く。)を集計したもの。



一人で生きるには、覚悟と行動力が大切かも!


困ったときに頼れる人がいない人の割合

※内閣府「高齢者の経済生活に関する意識調査」(平成23年)
注:対象は60歳以上の男女


事例1. 夫の会社で形だけ高給取りの妻が離婚へ

書類上は、夫の会社で働き高給を受けているが、実態は一度も給与をもらっていない妻A子さんが、夫と離婚した場合、夫からの年金分割はほとんど期待できません。なぜなら、離婚時の年金分割は、婚姻期間中の年金額が多い方から少ない方に年金が分割されるしくみなので、夫婦の給与がほとんど同じなら分割の効果は少ないからです。

後は婚姻時の財産分与に期待するくらいでしょう。日本は夫婦別産制といい、婚姻後稼いだ人の分はその人の財産になります。妻は書類上とは言え、かなり高給で働いており、実際にもらっていなくても理屈上は自分の財産はあると思われます。お金が残っていれば取り返せる可能性もありそうです。専門家の意見が聞きたいところです。

むしろ問題は、ずっと給与を受け取らないことを疑問に思わず、わずかばかりの生活費で暮らしてきた妻の曖昧さです。今後はもう少し、お金に関するシビアな感覚が必要でしょう。

事例2. 再婚同士の妻が死亡 〜 前妻の子と疎遠

Bさん(80代)は、10歳以上年下の女性と再婚し幸せでしたが、最期をみてもらうつもりでいた妻が予想に反し先に死亡しました。お互い再婚通しだったせいか、親族とも交流がほとんどありません。自分の責任なので仕方がないと諦めつつ、一人になり、離婚した先妻の子どもが寄り付かないのが一番辛いとしみじみ語る高齢単身者のお話しを伺いました。毅然と自分の心を分析しつつ、一方で実の子と会えない寂しさが伝わってきました。

事例3. このままでは無年金になりそうなのに、何も手続きしない

独身のCさんは66歳。公的年金の受給資格期間を満たせず、現在無年金。あと数ヶ月の保険料の納付で受給資格を満たすので親族が国民年金の手続きをして納付をすすめますが、本人は気にもせず何も行動しません。現役時も働いたり働かなかったり気ままに過ごしてきたようです。本人はこれからもときどき仕事をして稼ぎ気楽に何とか暮らしていくのでしょうか。Cさんがもっと高齢になり無収入になったときの怖さと、誰も相手にしてくれなくなったときの侘びしさ、その後の結末が見え隠れします。

一人で生きるにはより人との関係を造る人間力が一番大切


相談の現場でも、人の話しを遮り、一方的に声高に話し続ける高齢者に出会うことが多くなりました。人の話しを聞かないので、新しい情報も入りません。高齢期は誰しも人との繋がりが希薄になりがちです。高齢期の豊かさに対する感触は人それぞれですが、一人で生きるにはより人との関係を造る人間力が一番大切かも知れませんね。


執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)、『認知症マネー まるわかりガイド』(相続・後見マネー塾 (共著) アールズ出版)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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