セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第36回:生涯現役が理想だけれど・・・
       〜 一線をひいた後の生き方が人生の満足感を決める

現在、生年月日・性別により60歳代前半の厚生年金が段階的に65歳に引き上げられています。具体的には昭和16年4月2日以降生まれの男性(女性は昭和21年4月2日以降生まれ)は、定額部分の支給開始年齢が引上げられます。昭和28年4月2日以降生まれ(女性は昭和33年4月2日以降生まれ)から報酬比例部分の支給開始年齢が引上げられます。


【厚生年金支給開始年齢引上げによる継続雇用義務化のスケジュール】

厚生年金支給開始年齢引上げによる継続雇用義務化のスケジュール


年金の支給開始年齢の引上げに伴い法律も整備され、定年後の継続雇用などを採用する会社も増えました。今や、60歳定年で即退職する人はごくまれです。年金相談の現場でも、さらに65歳以降働いている人も増えつつあります。多くの人が長く働きたいと考え、長く働けることを美徳と考えているようです。しかし、長く働き続けた人こそ引き際の判断が難しくなりそうです。年齢は正直に重ねますが、続けているとそのことに気づかない人もいるからです。
今回は、相談の現場から感じることや熟年である私や仕事仲間のことも踏まえ、一線から引くタイミングの考え方についてお話ししたいと思います。

60歳定年後も働き続けることができるのは嬉しいけど、「定年」という人生の節目をハッキリ意識しないと、年齢を重ねたあとの「退職・離職」のとき対応できないこともあるよ!


高齢者の雇用情勢

総務省「労働力調査」で全産業の雇用者数の推移(平成24年6月現在)をみると、60〜64歳の雇用者は472万人、65歳以上の雇用者は340万人。定年到達者のうち、継続雇用された人の割合は73.6%と働く人または働かざるを得ない人は少しずつ増えています。年金の受給開始年齢がより厳しくなる今後はもっと増えることが予想されます。


【雇用者数の推移(全産業)】

雇用者数の推移(全産業)

資料:総務省「労働力調査」
※平成23年は、岩手県、宮城県及び福島県を除く44都道府県の集計結果


【定年到達者の状況】

定年到達者の状況

資料:厚生労働省「平成24年「高年齢者の雇用状況」集計結果」
※常用労働者数31人以上規模企業を集計



人生の「節目」に自分と向かいあうことは大事
 〜 本当の退職時にあわてないために

これまでは60歳の定年で退職一時金を受け取り、年金を60歳から受給できました。但し、続けて働く場合でも給与が大幅に下るケースが多く、これからの生活の不安が頭によぎる等将来のことを考えるきっかけになりました。一方、働かない場合は、ハローワークから失業給付(基本手当)を受ける手続きをすると、60歳からの年金が停止となります。
どちらを受け取るかを決めるため、基本手当の金額(30日分)と年金額(月額)を比べて多い方を選択する必要から、年金請求時等に年金の見込額の試算をしていろいろ考える機会がありました。併せて、配偶者の年金手続き、夫婦の健康保険の手続きなども必要でした。今まで会社任せだった手続きを自分でする必要があったのです。

ところが、年金が61歳からとなり法律でほとんどの人が継続雇用されています。定年で退職一時金をもらう人が多いけど、実態はあまり変わらず働き続けます。年金手続きも不要なのでハローワークと年金の調整もありません。さらに、会社によっては、61歳からなどの年金受給までの給与の下げが今までより緩和されています。ある意味定年が節目にならず、その後本当に仕事を退職したときに初めて危機感を感じることが予想されます。 危機感を意識するときが先延ばしされてしまい、退職・離職後に対応できないことも増えそうです。今こそ、少しでも若い60歳の定年前後の節目に、自分と向き合い将来を考えることが大切ですね。もちろん、今から意識できれば尚、ベストです。


【60歳から年金を受給できた世代】


60歳以降も働く場合。自分や配偶者の年金手続き、給与の大幅な低下等で、将来を考えるきっかけになった。

60歳で退職した場合。自分や配偶者の年金手続き・ハローワークの手続き、健康保険の手続き等で、将来を考えるきっかけになった。



【61歳から年金を受給する世代】


60歳以降も働く場合。60歳時、本人の手続き不要、それなりの収入がある人が多く、定年の意識が希薄になりがち。

60歳で退職した場合。60歳時※3を受給。給与も年金もないため将来考えるきっかけとなる。但し、60歳で退職は減少傾向。


事例からみた、先輩たちからのメッセージ

事例1. 定年後、働き慣れた職場でパートで働く女性

こんなんで給与もらっていいのか不安という女性

ずっと長い間公的機関で働き60歳定年で退職。職場から続けて働いて欲しいとの依頼で慣れた職場でパート勤務。時間にゆとりができたら趣味をあれこれやろうと心の片隅で思っていたが、現実は休日を有効に使えていない。逆に若い時はしなかったミスを重ねる毎日で、自分でもこんなんで給与をもらっていいのかと不安になる。

定年時やそれまで、将来何をやりたいか深く考えず、準備もせず、生活にも困らず、小遣い稼ぎくらいに仕事を続けているこの女性のことばは、ある意味すごく率直ですね。この女性のような人は多いかと思います。ご自分の心のモヤモヤがこの発言になったようです。女性の場合、第2退職までかなり時間があります。気づいた今から意識して微調整もできそうです。


事例2. 「もう、テニスに来ないで欲しいと」言われショックだった!

以下は私の知り合いのお話しです。長年唯一の趣味であるテニスをしていた知人は、あるとき所属する地域のテニスクラブから「もう来ないで欲しい!」言われたときが一番ショックだったと話してくれました。友人が80歳のときです。テニスは優雅なみかけよりずっとハードなスポーツです。高齢になると自分が思っている以上に反応が鈍くなります。テニスは相手があるスポーツなので、いつも高齢者にあわせてばかりもいられないという意見もよくわかります。 以前、自分ではまだまだ若者に負けはしないと言う高齢者にお会いしましたが、よくよく見ると相手の上手な人が、高齢者が打ちやすいところにボールを集めてくれていたのをみたこともあります。たまならいいけど、いつも相手をする人の不満は募りそうです。

知らなかった、自分はうまいと思っていたが、相手が自分にあわせてボールを打ち返していたことを。

このお話しは、何も趣味のテニスに限らず仕事にも関係しそうです。自分のことは中々自分で分かりません。仕事の引き際は自分なりの判断基準を決めておく必要がありそうですね。趣味・仕事で生涯現役を貫くことは素晴らしいことですが、知らない間に相手側に迷惑をかけていることもありそうです。高齢になればなるほど、第3者の意見が本人に届きません。仮に届いても受け入れ難いのも高齢者の特徴です。

私の場合なら、セミナーの終了時間は厳守できているか、仕事の締め切り日は守れているか、周りから同じことを指摘されることが増えていないか、将来を見据えた視点を持ちつつ、今やるべきことを追求・段取りができているかなど、チェックリストを作って点検してみようと思っています。逆に視点を変えて、若者と同じ土俵で張り合うから高齢者しかできない分野に活躍の場を広げられたら、最高ですね。


節目に1つ1つ行動しておくと、次やることが見えてくる

人生の節目の存在には意味があります。節目の手続き・やりたいこと・やるべきこと、何が不安かなどに気がついたら即行動するといいでしょう。もちろん行動には金融商品や保険の購入などマネープランも含みます。行動することで今まで見えなかった次何をすべきか見え、新しい気づきも発見できます。行動が人生の幅を広げてくれるのです。節目のまっただ中にいても何も気づかずサラッととおり過ぎて後で後悔しきりとなるか、壁にぶつかりながら行動しつつ自分のベストの生き方をつかみ納得の人生とにできるかはあなた次第です。


執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)、『認知症マネー まるわかりガイド』(相続・後見マネー塾 (共著) アールズ出版)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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