セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第48回:親と子の利益相反が引き起こす高齢期の悲劇
      〜 親を虐待している意識がない親族

平成27年1月から相続税と贈与税の内容が変わり、金融関係や生命保険会社などで開催する対策セミナーが活況のようです。一定以上の財産がある人たちは節税対策に必死ですが、財産があってもなくても、分ける配分に揉めトラブルが発生するのが世の常の相続。マネーや税の専門家も両親が亡くなり、子どもたちだけで相続する二次相続のときはトラブルが多く、財産内容について、ある程度のことを把握しておく必要があると述べています。今回は、相談の現場などで見かけた親と子の利益相反が引き起こす、主にお金の悲劇についてお話します。

 施設従事者による高齢者虐待がときにマスコミなどで話題になりがちだけど、実は親族による虐待の件数の方が多いのだよ。在宅か施設で暮らすか、高齢者の居場所 (住まい) 探しも簡単でないね!


施設従事者より親族、女性より男性の介護者の虐待が増えている

高齢者虐待と認められた件数は、養介護施設従事者によるのが、221件(前年比66件・42.6%増)、養護者によるのが15,731件(前年比529件・3.5%増)と、親族の虐待が多いことが統計からわかります。一方、虐待件数に比べ、市役所への相談件数の伸びは、養介護施設従事者によるのが962件(対前年比226件・30.7%増)と多くなっています。在宅における介護の実態がみえにくい状況が予想されます。

【高齢者虐待の判断件数など】平成25年度・24年度 <厚生労働省>

  養介護施設従事者等(※1)によるもの 養護者(※2)によるもの
虐待判断件数 通報・相談件数※3 虐待判断件数 通報・相談件数
25年度 155件 962件 15,731件 25,310件
24年度 66件 736件 15,202件 23,843件
増減(増減率) 66件(42.6%) 226件(30.7%) 529件(3.5%) 1,467件(6.2%)

※1 介護老人福祉施設など養介護施設または居宅サービス事業など養介護事業の業務に従事する者
※2 高齢者の世話をしている家族・親族・同居人等
※3 市町村が相談・通報を受理した件数

【養介護施設従事者などによる高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移】

要介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移

※厚生労働省:平成25年度 高齢者虐待対応状況調査結果概要

介護施設従事者等に虐待されている高齢者の総数402人(複数回答)。うち、身体的虐待が258人(64.2%)でもっとも多く、心理的虐待132人(32.8%)と続きます。


高齢者虐待の種別の割合 ※被虐待高齢者が特定できなかった9件を除く212件における被虐待高齢者の総数402人において、被虐待者ごとの虐待種別を複数台東形式で集計。

※厚生労働省:平成25年度 高齢者虐待対応状況調査結果概要

【養護者による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移】

養護者による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移

※厚生労働省:平成25年度 高齢者虐待対応状況調査結果概要

養護者に虐待されている高齢者の総数16,140人のうち、身体的虐待が10,533人(65.3%)で最も多く、心理的虐待6,759人(41.9%)と続くのは施設従事者による虐待と似た傾向ですが、養護者による虐待の特徴は経済的虐待3,486人(21.6%)が多いことでしょう。

高齢者虐待の種別の割合 ※被虐待高齢者の総数16,140人において、被虐待者ごとの虐待種別を複数回答形式で集計。

※厚生労働省:平成25年度 高齢者虐待対応状況調査結果概要

虐待者との同居の有無では、「虐待者とのみ同居」が、7,893人(49.0%)で最も多く、虐待者及び他家族と同居の6,084人(37.7%)を含めると13,977人(86.7%)同居しています。

虐待されている高齢者からみた虐待者は、「息子」7,143人(41%)が一番多く、次いで「夫」 3,349人(19.2%)となっています。主に介護をしていると予想される女性より、男性の虐待者が多いのは意外と言えそうですが、「やはりね!」という声も聞こえてきそうです。男性は仕事中心で暮らして来た分、家族の世話に慣れておらず、世話をされて当たり前で暮らしてきた人も多いことも関係しているのかも知れません。高齢者施設を訪問時、夫婦で入居している夫が妻に罵声をあびせているのを見かけることがあります。

被虐待高齢者からみた虐待者の続柄

※厚生労働省:平成25年度 高齢者虐待対応状況調査結果概要


「親のお金」と「自分のお金」の意識がない親族

在宅の経済的虐待の特徴は虐待している子にその認識がない、または認識が希薄なこと。
大人になれば親と子どもでもお金は別管理が常識ですが、親の管理能力がなくなる高齢期はウヤムヤになりがちです。以前、年金を受給中の親が亡くなったのに死亡届けを出さずに、子どもが親の年金を使っていたことが発覚し私たちを驚かせました。

長生きの今こそ、お金に対する「倫理感」が求められるね!特に、「親のお金」と「自分のお金」は別だという認識が欲しい…

しかし、親が生存中でも親の年金を使っている親族もいます。例えば、父が亡くなり、母が受給している遺族厚生年金を子が生活に使う例などです。年金は個人資産ですから、遺族厚生年金は母の財産ですが、高齢者のかなりな額の遺族厚生年金額が消えている可能性もあります。

但し、現実には、生活が苦しいから止むを得ず親の年金を生活費に入れる子もあれば、父が亡くなってもらえる遺族厚生年金は子の相続分と誤った認識で子の生活費に入れる子もいます。長生きになった分その総額はかなりになります。結果、母の財産は減少、子の使い込みがなければ母が希望していた施設に十分入居できた筈が、施設に入れないことなどもありそうです。かつ、母が亡くなって二次相続のとき、母本来の財産がほとんどないなどで他の親族とのトラブルが発生と言うわけです。上記は親のお金を必要以上に使い過ぎた例です。

長生きすればするほど総額は多くなる筈だったのに!

一方、十分なお金がある母のために、お金を使わないのも経済的虐待になります。例えば、資産は十分にあるのに、単に支出を抑えるためだけに母の希望していた施設を選ばない、または、母のためにお金を使わないケース。親のお金の減少を抑えた分、子の相続分が増える理屈で、親と子の利益は相反します。

相続財産が多い≒被相続人が満足した人生を送ったとはいえないことも!

今、それなりに資産がある人の多くが、税改正を考慮した相続対策に躍起になっていますが、そもそも財産を当初の予定どおり、自分のために使い、残せる人がどれほどいるか疑問です。それなりにあると思っていたのに、いざ相続が発生したらほとんど残ってなかったり、そもそもいくらあったかも見えてこないケースも。被相続人となる親が満足した人生を送るには、親子間のシビアな金銭感覚が必須です。とりあえず私も、本文の冒頭に示した専門家の言葉「財産内容についてある程度把握しておきましょう」から始めてみます。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)、『認知症マネー まるわかりガイド』(相続・後見マネー塾 (共著) アールズ出版)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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