セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第50回:夢と現実のズレをどう受け入れる!
      〜 退職後、地域に生きる難しさ

平均寿命の延びや考え方の多様化などにより、男女に関わらず働く期間が延びたことはご承知のとおりです。確かに経済面では嬉しいことですが、人生の質・豊かさの視点からみるといいことばかりではありません。働く期間が長びけば、その分セカンドライフの準備が遅くなる傾向にあるからです。ライフプランセミナーでも早くから生き甲斐として趣味づくりをしておこうと言われますが、これが口で言うほど簡単ではありません。世にあふれている情報発信者の多くは現役世代、判断能力が十分あり、機能的にものごとをこなす人が前提の情報になりがちです。今回は、遅まきながら熟年の私が始めた趣味探し奮戦の実態などお話します。

 退職後は「地域」で暮らすと簡単に言うけれど、それぞれ長い歴史がある分、「職場」と「地域」の間には、暗くて深い谷や川がある認識も必要だよ。


統計からみた高齢者の社会参加活動

1. 60歳以上の6割がグループ活動に参加

60歳以上の高齢者の61.0%(平成25(2013)年)が何らかのグループ活動に参加しており、20年前(平成5(1993)年)に比べ18.7%増、なかでも「健康・スポーツ」は、20年前に比べ14.8%増です。

参加の効果は、新しい友人ができた、生活に充実感を得られたなどです。

高齢者のグループ活動への参加状況

資料:内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成25年)
(注1)調査対象は、全国の60歳以上の男女
(注2)*は、調査時に選択肢がないなどで、データが存在しないもの。

一方、生涯学習に参加していない60代の理由に「仕事が忙しくて時間がない」(40.8%)が最も多く、次いで「きっかけがつかめない」(20.9%)、70歳以上では「特に必要がない」(19.8%)が多くなっています。

高齢者が生涯学習を行っていない理由(複数回答)

資料:内閣府「生涯学習に関する世論調査」(平成24年)
(注)調査対象は全国20歳以上の日本国籍を有する者だが、そのうち60歳以上の回答を抜粋して掲載


仕事中心で地域デビューが遅れた 〜私の場合〜

私の仕事は専門職なので定年がない分、辞めどきを決めるのが難しいのが現実。ただ、最近、知人などのいろいろな実態を知るにつけ心境に変化があり、このままずっと仕事漬けでいいのかと。今は仕事仲間との交流、夫婦で楽しむ趣味などで不満はないけれど、このままだと退職後の人との交流の少なさに気づかされました。疑問を持ったら即行動が私のモットー。今は、仕事を続けながら興味があることに挑戦中です。

【課題は、交流範囲が狭いこと】

現在の趣味 内容 課題・効果
カラオケ 夫婦で個人レッスン (月2回) 夫婦で趣味を共有できるが、限られた歌しか覚えない。
読書
ビデオ鑑賞
ミス・マープル、シャーロック、シャーロック・ホームズの冒険、名探偵ポワロ、刑事コロンポ、ジェシカおばさんの事件簿 など 室内で1人の時間を楽しんでいるが、仕事を辞めたとき、人との交流の減少が心配。

一見、仕事があるうちは、充実してみえるが…

【今後の希望は、いろんな人と交流したい】                                    ★続けたいもの

模索中の趣味 内容 課題・効果
体操クラブ 熟年女性のみ参加の気楽な会 自宅に近く、技能不足でも参加可能で楽しい ★
食事会 旅行会社などの食事会に参加 様々な参加者に触れ、生き方の参考にしたい
カラオケ 団体 (月2回) いろんな歌を覚えられ、知り合いを増やしたい ★
お手玉 お手玉を習い、施設訪問で披露 お手玉は楽しいが、時間感覚がない会など体験し、地域入会の参考にしたい
健康麻雀 飲まない、賭けない麻雀 4人で楽しみつつ、脳を活性化したい ★

危機感を上手に活かしたい

先日、外出から帰った夫が、偶然街で出会った30年来の知人の奥様から聞いたお話は衝撃でした。商売をたたんで引退されたのが2年前。引退後ずっとテレビの前に座って過ごし、変だと思って医者にみてもらったら、「アルツハイマー型の認知症」と診断されたとのこと。年を重ねるといろんな症状がゆっくりでるので、気づくのが遅れたのかも知れません。テレビ好きの夫も心境の変化があったようで、心なしか美術館などへの外出が増えています。高齢期、自分で不安を感じたとき、行動できるうちが自分の生活の質を高められると気づきました。

男女に限らず、仕事人間だった人こそ、過去に興味があったことの棚卸しや
将来やってみたいことの開発を今から手がけておくといいね!

そんな訳で、私もヒマを見つけて動いています。上記の会のことを知ったきっかけは、ネットで探したり、友人に話題を提供して教えてもらったり、知り合いからもらったチラシを参考にしたり、仕事関係者からのメールも有りました。分かったことは、意識して行動すれば、情報は集まってくるということ。いただいた情報のうち、興味がある会に必ず参加して納得して決めるのが私のやりかた。体験コストは初期投資と割りきっています。以下は体験費用とやってみて感じたことです。

  1. 体操クラブ 月6,000円ほど
    運動の大切さは分かっているけど、スポーツが苦手、時間がかけられない私にとり、短時間の運動、ごく普通の女性の集まりで気軽に声掛けあう空間は居心地がよい。
  2. 食事会 1回8,000円〜10,000円
    懇親を兼ねた会が多いが、参加者の中には一言も自分から話さず、雰囲気が固くなり周りの気配りが必要な人、逆に1人大声で話し仕切る人など様々。ときに会がつまらないと途中退席する人も。また、高い会費にあわない食事もある。今までの生き方が団体の場で出やすいのも高齢期の特徴なら、いずれは施設入所する確率も高い高齢期、誰とでも楽しくできる会話力を今から養っておく必要に気づくきっかけをもらえる。ちなみに、参加者は女性が多いのも特徴。先日参加した会の40人中男性は5名程でした。
  3. カラオケ 月5,000円 (入会金2,000円)
    時間が許す限り他の人のレッスンに同席可能なのでいろんな歌を覚えられ、他の人と話が楽しい。1人参加の趣味があれば老後は安泰だ。
  4. お手玉 月2,000円
    お手玉は一見易しそうだが、真剣に取り組めば意外と体力も必要かつ楽しい遊びである。学校や高齢者施設などへの慰問もあり忙しいとのこと。但し、中には、一日200円で飲み放題の高齢者の居場所的な◯◯カフェと掛け持ちの参加者もおり、技術を身につけるより参加することが目的の会員も。会の進行がとてもゆっくりで一日がかりの覚悟が必要。地域的と言えば最も地域的な会。自分の入会目的を決めた加入が前提となる。
  5. 健康麻雀 月5,000円
    タバコ、お酒なしで、賭けもしない健康な麻雀をモットーに、4人で座卓を囲んで会話を楽しめ、脳の活性化に役立ち、年齢に関係なく楽しめる。友人の会に所属する「70歳で現在93歳の女性」にあやかりたいと夢がふくらむ。

楽しみ方は人それぞれ

上記はあくまで私の場合。今までの趣味にプラスして、新しい趣味も検討中です。
少し前までは、定年後または退職後の地域の暮らしの心配は主に男性に対してでしたが、働く女性が増えた今、地域の緩やかな暮らしに溶け込む不安は男女共通と言えそうです。寿命が短いときは予想できなかった、「長くなった老後をどう過ごすか」がこれからの課題でしょう。
老後は時間が通り過ぎるのをじっと待つか、いろんなことに挑戦して楽しみながら時間を追いかけていくのか、今からの生き方にかかってきます。

2. 約6割の高齢者が若い世代と交流希望

若い世代と交流したい高齢者(「積極的に参加したい」、「できるかぎり参加したい」の合計)は約6割と増加傾向にあります。但し、希望どおり交流が長く続くかどうかは別問題です。私の体験からも分かるように、高齢期に人と交流を上手にできる人とできない人の差が大きいからです。

若い世代との交流の機会の参加意向

資料:内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成25年)
(注)調査対象は、全国の60歳以上の男女

高齢期の特徴として、若いときは理性で抑えていた部分が弾け、突然怒るほどでない些細なことで罵声をあびせる人に時にお会いすることがあります。また、プライドばかり高くて、何かと過去の経歴を自慢し、相手の心情に気づかず無遠慮に詮索ばかりする人もいます。肩書を外し、地域で若い世代を含めた人たちと交流し、よりよい関係を続けるには、謙虚な心と前向きな気持ちが必要です。しかし、残念なことに共に兼ね備えた高齢者は少ないのも現実です。

ちなみにニュアンスは少し異なりますが、若い頃にモテていただろうと思う人のベスト5は以下のとおりです。高齢になっても、好印象の人のイメージが伝わってきますね。高齢期いろんな人と交流しながら楽しく生きるコツは、日頃から自分の印象度を高める生き方も大切なようです。

【若いころモテていただろうと思う人の特徴】

  男性 女性
1 無理した若作りでなく、年令にあったオシャレをしている
(自分の似合うものを知っている人は客観的能力にたけており振る舞いもスマートとのこと)
2 知識が豊富で、会話にユーモアがある いつもにこやかで、笑顔がかわいらしい
3 いつもにこやかで、笑顔がかわいらしい ことば遣いが美しい
4 高圧的な物言いをしない 誰に対しても気遣いを怠らない
5 姿勢がいい

※ 総務省 2013年



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)、『認知症マネー まるわかりガイド』(相続・後見マネー塾 (共著) アールズ出版)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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