セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第52回:終の棲家探しは容易ではない!
   〜 見学してきました、スマートコミュニテイ稲毛

   

最近、日本創成会議が発表した高齢化対策「東京圏高齢化危機回避戦略」が話題になっています。都内・周辺地域医療や介護、住まいの確保の厳しさが予測され、他地域(特に医療や介護施設などにゆとりがある地方都市)への移住も対策の1つとしています。

国は、在宅医療と介護を連携して、可能な限り高齢者が地域で暮らせる「地域包括ケアシステム」の推進に取り組み始めたばかり(平成27年4月施行)。国の施策との矛盾を知りながらの提案と受け止めれば、近い将来の危機感がより伝わってきます。

しかし、熟年の私にとって終の棲家探しは身近に迫る重要課題。不安ばかり抱えていても先に進めないと悟り、今回前から気になっていたこれまでと少し違うシニアの住まい「スマートコミュニティ 稲毛(千葉県)」を見学してきましたのでご紹介します。

もはや、各地域で在宅支援を充実させる理想論だけでは解決しない気がする!一方、東京圏に介護施設などが不足するなら地域に移住すればいい、といった提案から、高齢者と地域のとまどいも・・・

<医療・介護に余力のある41地域>

医療・介護に余力のある41地域 民間の有識者会議「日本創成会議」資料より

※民間の有識者会議「日本創成会議」資料より

スマートコミュニティ稲毛とは

最近主に話題になっているのは、特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型医療施設など介護保険3施設です。比較的費用も安いのが多く人気ですが、高齢者の増加に施設数が追いつかないのが実態です。そこで、費用は高めですが、民間の介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅(サ高住)などに入居せざるを得ない現状です。但し、今回ご紹介する施設は、既存の有料老人ホームと少ししくみが異なります。

<スマートコミュニティ稲毛の場合>

スマートコミュニティ稲毛の場合

【所有権施設と分譲マンションとの比較】

  終身利用権付き高齢者住宅 スマートコミュニティ
権利 終身利用権 分譲(所有権)
死亡時・退去時など 死亡退去時・資産なし 相続可能
退去の場合 一定期間経過で返却なし 売却可能
入居者 要介護者が多い 元気な人が多い

<見学しての感想>

①元気なとき、自分で選択して入居

50歳以上で自立が入居条件。日本有数の広さを誇るクラブハウスで行き交う人は、皆さんとてもお元気で生活を楽しんでいらっしゃいます。さすが、自分で選択して入居される方が多いと言われる案内人の説明に納得。介護付き有料老人ホームなどに入居の場合、入居時お元気な人を除き、在宅では限界な状態で入居が多いのが一般的との違いです。訪問介護事業を立ち上げており在宅扱いでヘルパーさんの御世話になることは可能ですが、介護状態が重度になると退去せざるを得ないこともあります。なお、デイサービスは27年度中に稼働の予定とのこと。開設から5年が経ち、介護を要する人の需要も少しずつ増えてきているとのことでした。

②趣味・セミナーのメニューが多彩で実践も活発

これまでいろいろな施設を見学してきましが、ゴルフなどの趣味の掲示板のメニューが活発に実践されている例はごく稀、仮に実践されていても高齢者にしてはお元気のレベルが大半でしたが、このコミュニティではまさに現役と遜色ないほどお元気な人が多く驚きました。

サークル 催し一例

③ゆとりのクラブハウスでの食事が美味しい

スマートコミュニティ稲毛の写真

基本的に朝と夕の食事付き、皆さんお元気なので昼はお出かけの人も多いことなどから、昼食は各自自由にしているとのこと。洋食、和食、焼き肉などお店も分かれており、レパートリーも多彩で美味しい。なお、クラブハウスには居酒屋風の施設もあり、ボトルもキープできるシステムが個人的には嬉しかったりします。

④分譲マンションがリスクになることも!

一般的に、介護付き有料老人ホームの権利は利用権です。つまり、一定期間を過ぎて退去の場合などは入居時の一時金は戻りません。たまに介護付き分譲マンションもありますが、入居条件があるため利用者が限られ、売却したい本人や相続した子などが苦慮している例も見受けられます。

かつ、仮に子が相続または本人が退去して入居しなくても、毎月の維持費がかかるリスクがあります。

高齢者施設の場合、所有権で相続可能がすべてメリットとは限らないのです。この施設もそうしたリスクを抱えています。現在のマンションも完売ではなく空きがあり、売り出し中の中古物件は本来の価格より安くなるそうですが、次の売却リスクは残ると言う訳です。

販売価格一例(2015.4.6現在 ※販売価格は期間限定の特別割引価格、すべて税込)

B棟 3F B棟 8F D棟 3F E棟 4F
33.24u 70.12u 55.71u 67.34u
管理費/8,000円 管理費/14,000円 管理費/13,400円 管理費/15,900円
修繕積立金/4,970円 修繕積立金/10,510円 修繕積立金/9,180円 修繕積立金/12,800円
1,520万円 3,100万円 2,940万円 3,830万円

⑤介護付き施設に移るまでの繋ぎにいいかも・・・

老後の暮らし方に関する考え方のズレは男女でかなりありそう!それは、統計を理論的に分析する学者と、施設や行政の現場で働く人の意見の違いのように交わることが難しそう・・・

元気なうちに入居しアクティブに暮らせば、それだけ介護される期間を短縮でき、あとは介護付き施設で暮らすことも可能でしょう。現在、約650人の入居者、将来的には1500人にしたいそうです。時間の経過とともに入居者で介護の御世話になる人も増えれば介護環境もよくなりそうな気がしますが、楽観しすぎでしょうか。

老後の暮らし方に関する考え方のズレは男女でかなりありそう!それは、統計を理論的に分析する学者と、施設や行政の現場で働く人の意見の違いのように交わることが難しそう・・・

⑥つれあいに聞いてみました!

既存のよくある高齢者施設を見学していつも感じていたのは、パンフレットの豪華さに比べ、入居者の精彩のなさ。見学後入居してみたいと感じたのは今回が初めてです。早速連れ合いに話したところ、「いずれ介護付き施設に入居なら、わざわざ転居しなくても今の地域で楽しいことを増やし、やってみたいことに挑戦した方がいいのでは!」と、ある意味説得力があるけど覚めた返事。但し、現実は今を楽しむ環境づくり、今を楽しむ多くの人との交流が難しいからこうした施設が人気だと私は個人的に思うのですが・・・。

今後介護が必要になる時期は夫婦同時におこるとは限りません。夫婦ならではの不安に対する処理時に、本人の能力や経済に問題も起こりそうです。現在、入居者は単身75%、夫婦25%、夫婦で入居が少ない理由が少しわかった気がしてきました。

偶然ですが、15年来の友人(70代男性・単身)がつい最近この施設を購入しました。1人身が幸いしたようです。但し、経済的にゆとりがある友人も、自宅の売却が進まないことを心配されていました。高齢期に描く暮らしの実現は、ゆとりあるマネー管理と共に譲れない生き方(夫婦なら2人の生き方の一致)を決めておく大切さを改めて考えさせられました。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)、『認知症マネー まるわかりガイド』(相続・後見マネー塾 (共著) アールズ出版)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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