セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第59回:特別養護老人ホームの入所、原則要介護3以上
      〜特例入所のハードルはかなり高い

   

高齢化も着実に増えている現在、重度の要介護者や認知症高齢者に対する介護保険制度のコストも増えるばかりです。国は持続可能な介護保険制度を目指し、介護サービスの質を維持しつつ、介護の人材確保のため処遇改善を決めました(平成27年度報酬改定)。 目指す方向性に異論はありませんが高齢者を取り巻く現場では、やりきれない問題も増えています。今回は、平成27年4月から施行された特別養護老人ホーム(以下特養)の入所、原則3以上についてお話しします。原則要介護3以上とあるので、特例に該当なら入所可能と淡い期待を抱いてしまいますが現実はそう甘くありません。高齢期の施設入所の競争は過酷です。老後破綻が話題になっている今、今後は年金収入はそれなりにあるけれど預貯金などが少ない方の高齢者施設入所トラブルも増えそうです。

改正後、60歳定年後、短時間労働者として継続雇用で働く場合、社会保険(厚生年金・健康保険)加入で受ける恩恵もあるよ。但し、家族状況・加入形態などで恩恵度は人それぞれだけど・・

特養は、介護保険施設の1つ

介護保険施設には、介護老人福祉施設(以下特養)、介護老人保健施設(以下老健)、介護療養型医療施設の3種類があります。

特徴

名称

概要

入居条件・手続き

費用負担

介護保険法
適用の施設。
施設サービス計画に基づき介護、日常生活の世話を行う

特別養護老人ホーム
(介護老人福祉施設)

在宅介護が困難な、寝たきり等の人。介護・食事・入浴サービスあり

65歳以上。
原則要介護3以上

介護保険の自己負担・住居費・食費・雑費で多床室月8万円〜、個室月15万〜

老人保健施設
(介護老人保健施設)

リハビリ、介護を必要とする要介護者が一時的に利用する施設

65歳以上。要介護1以上。施設と契約。差額ベッド代あり

療養病床
(介護療養型医療施設)

長期にわたり療養を必要とする要介護者。医学的な看護の、介護やその他の医療を実施。平成29年度廃止予定

病院と契約
差額ベッド代あり

入院時の保証金15万円程度。介護保険の自己負担。住居費・食費・雑費等で月11万円(多床室)

<参考> 日本FP協会  パーソナル・ファイナンス  FPテキスト1 を修正

特養待機者52.4万人、在所者の88.1%が要介護3以上

特養の待機者は52.4万人(厚生労働省・平成26年3月)、入所の必要性が高い要介護4・5の在宅の方の入所申込者数約は8.7万人でした。平成26年の要介護者別在所者数の構成割合は、要介護3が21.5%、要介護4・要介護5共に33.3%、要介護3以上で全体の88.1%を占め重度の入所者が多くなっています。ちなみに老健は要介護4の27.0%が最高です

短時間労働者 の厚生年金・健康保険の適用拡大

介護度別在所者数 (構成割合 %)の年次推移   (各年9月末現在)

短時間労働者 の厚生年金・健康保険の適用拡大

特養に入所できるのは、原則要介護3以上

上記からも分かるとおり、入所者の約9割弱が要介護3以上の特養は、これまで重度の要介護者や在宅生活が難しい方が入所できましたが、平成27年4月より新規に入所する場合、原則要介護3以上の方が対象です。但し、要介護1や2で以下のようなやむをえない事情があれば特例的に入所できるとあります。

  1. 認知症で日常生活に支障をきたすような症状が頻繁にみられる
  2. 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障をきたすような症状が頻繁にみられる
  3. 深刻な身体・経済的な虐待が疑われる等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態.
  4. 単身世帯等家族の支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分

しかし、先に述べたとおり現実はそんなに甘くはありません

Aさんの場合〜複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)を利用

複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)は、利用者が利用者の選択で施設への「通い」を中心とし、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問(介護)」(看護)」を組み合わせ地域でサービスを受ける制度です。要支援1・2の人は利用できません。

ここで経済的に苦しい人は問題発生です。

例えば、複合型サービスは、自宅有りが前提でのサービスを利用なので、民間賃貸住宅などに住んでいる場合、月賃貸料と通いのサービス利用料の両方の負担が発生します。仮に、独居で諸事情により在宅生活が限界だが家族の支援がない場合、短期間 (事情により長引くこともある) の宿泊になるとかなりの負担です。かつ、要介護1または2では余程の事情がない限り、上記の特例要件に該当して特例入所申請して特養入所などが叶うことは難しいのが現状です(市区町村により温度差有)。認知症の症状が重度でも身体的に自立だと要介護度が低くなりがちが一般的です。とは言いつつ、寝たきりの方が多い特養に身体的に自立した方が運良く入所できてもまた違う問題もありそうですが・・・

仮に、老健に入所できれば本人の収入により安い費用負担ですみますが、老健は「終の棲み家」ではないので短期(3ヶ月〜6ヶ月)こ゛との転居になります。ただでさえ不安定な方の場合、安心の住まいになりません。但し、ここでも自宅と老健の両方の費用が発生し、経済的にゆとりがない人にはかなりの痛手です。経済的に厳しく自宅に戻れないほどの状況なら自宅の賃貸契約を解除せざる得ないこともありますが、今度は住民票の置き場所をどうするかが悩みです。老健に住民票をおくことはできないからです。

改正後・厚生年金加入で働く

キャンペーン格安施設を検討!

要介護度1・2だが在宅が限界でも資産が少ないと高齢期の施設選びはとても大変です。そこで、今後の参考にと先日、期限限定の格安住宅型の有料老人ホームAを見学してきました。通常価格よりかなり安いので嬉しいキャンペーンです。しかし、高齢期は時間経過で要介護度も重度になり、オムツ代、医療費、介護サービス利用料が増えるのは当然ですが、入院した場合の入院代と介護施設での費用の2重負担のしくみにも要注意です。

改正後・厚生年金加入で働く

例えば、Aのキャンペーン価格は食費代を安くしており、入院したとき施設に支払う食事基本料との差額は少しです。従って、入院しても毎月の施設支払い額はほとんど変わりません。結局施設代と入院費の両方の負担がかなり高くなり、ギリギリの予算で入居した場合の負担増に戸惑うことに。 こうしたキャンペーン物件は、チラシに書かれている以外の費用が必ずあります。それらの金額はそう高額でなく普通なら気にならない額ですが、ゆとりがない人にとり致命的です。入居前の説明で全ての支出について説明を受け確認が必要です。さらに、入居後の支払い金額の変更の有無など契約内容の確認もポイントです。目先の安さで契約して後で困ることもおきます。 いずれにしても安いには安いなりの理由があるのです。仮に、キャンペーン価格の施設が希望の高齢者施設だとしても、その施設を選択できるのもそれなりの経済的ゆとりがあればこそという現実。高齢期を快適に過ごすには、益々早めの準備が必要の認識と着実に自分のお金を増やしておくマネープランの実行力が求められていると実感しました。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)、『認知症マネー まるわかりガイド』(相続・後見マネー塾 (共著) アールズ出版)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

ページの先頭へ

Copyright(C) NTT IF Corporation