セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第65回:イザそのとき、優先順位を決められない!       
 〜人生のライフイベントを心に刻んでおこう 〜

   

7月は、久しぶりにゆっくりできた時間を利用して、介護付有料老人ホーム、認知症高齢者のグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅 (以下サ高住)などの見学、サ高住主催のセミナーを2ヶ所受講してきました。当初趣味と仕事を兼ねて始めた施設見学ですが、私自身も年を重ね見学などにも今まで以上に熱が入ります。自分が入居したい施設か、金銭的に入居可能かなど、条件チェックが厳しくなってきたと感じます。

最近は、仲間からの介護の実態、見学時に同伴した高齢女性などから意見や感想を聞くことも多く、高齢期を豊かに過ごすには、それなりの準備が必要なことを改めて感じています。
共通するのが、様々な意味での準備不足から「優先順位を決められない」ケースです。今回は、高齢者の現実の一部を、夫の介護をすることが多い妻の側からお話します。

予想されるライフイベントを心にとめておこう

平成27年簡易生命表によると、男性の平均寿命は80.79歳、女性の平均寿命は87.05歳となり年々伸びています。一方、平成25年の健康寿命(日常生活に制限のない期間)は、男性71.19歳、女性74.21歳。年々日常生活に制限のある期間が短縮されているとは言え、平成25年の平均寿命と比べ男性で約9年、女性で約12年間は日常生活に制限がある期間です。
この期間は「医療や介護のお世話になる可能性がある期間」という認識が必要です。

ライフイベントと言うと、子どもの教育時期、子どもの結婚、定年・再就職、旅行・家のリフォームなどが浮かびますが、自分や配偶者の区切の年齢を予想した介護・医療の必要な時期のイメージと、必要経費の考慮も必要です。長い年月があって老後があるのですから、その人にあった蓄えの必要を意識した家計管理が求められます。健康寿命なども参考にしながら前倒しで将来をイメージしておきましょう。

<平均寿命と平均健康寿命>

事例から見える、高齢期の現実


事例1:子どもに迷惑をかけたくないと言いつつ、妻の苦労に気づかない夫

子どもに自分の介護で苦労させたくないと考える親は多いのですが、ときに1番お世話になる妻の苦労に気づかない夫もいます。Aさん(80代)は長い間編集の仕事をしていましたが10年ほど前自宅で倒れ、要介護4で在宅暮らしはかなり難しい状態です。Aさんがショートステイなど利用してくれれば、その間精神的・体力的に妻B子さん(70代後半)は楽になるのですが、施設が禁煙なので喫煙者のAさんは頑として施設利用を拒否しています。このままでは、妻の方が先に倒れてしまいそうですが、Aさんに妻の状況を気にかけるほど心のゆとりはありません。

最悪、B子さんが倒れたら、Aさんは自宅で一人暮らしは無理なので子の負担が大きくなります。何を我慢するのか、ベストではないけどベターな選択は何かなど、柔軟に頭を切り替えた選択も大切です。但し、高齢になればなるほど、この選択が中々難しくなります。何年続くか先が見えない介護だからこそ、意思を伝えられるうちに家族で話しあっておくべきでした。B子さんは、夫の介護を20年続けている友人に電話で愚痴るしかない毎日と聞き、ことばのかけようもありません。

事例2:とりあえず介護付有料老人ホームに入居 したが、資金不足

子どもに迷惑をかけたくないため苦労する親もいれば、子どもを頼りすぎる親もいます。 C夫さん(80代後半)が倒れ車いす生活になり自宅で介護が無理となったが特別養護老人ホームの空きがなく、止むを得ず介護付有料老人ホームに入居、数ヶ月後に資金不足になることは分かっています。それにも関わらず健康面で不安を抱く妻のD子さん(80歳代前半)は夫婦で入居できる施設を探しています。夫婦2人同時となると、どんなに安い施設でもかなりの額ですが、D子さんは子どもに費用を出してもらうよう相談してみると仰っています。 D子さんの年齢から子は50歳前後と思われ、これから子自身も老後を見据えたプランが求められる年代です。各家庭の事情があるので、一概に言えませんが自分の家庭や夫婦の生活を守るだけでも厳しい現在、親の言い分がどれだけ叶うのか興味のあるところでしょう。

D子さんのように希望施設とご自身の資金で可能な施設に入所(入居)する選択の折り合いができない人が徐々に増えている気がします。現在、一般的に普通の暮らしの子なら、親の分までの支出はかなり大変です。親の資金にあった施設でいいのではと子が思うのはごく自然だと個人的に思いますがいかがでしょう。収入の範囲内で、少額でも蓄えつつ暮らすくせ(習慣)づくりは、若いときから身につけるが基本の所以です。習慣は継続から身につきます。

事例3:社会の変化を理解できない〜バブル時のイメージが邪魔

高齢期の特徴の1つに物を捨てられない、決められないことがあります。マンションの一室、使いみちのない荷物の山、固定資産税の支払いで支出のみ続き、物件は築40年近くと空き家で古く、いくら都心にあるといっても価値はオリンピック後には下がりそうです。
持ち主のE子さん(80代後半)にとり、他の空き家も含め、相続対策として預貯金で持つより評価額が低い不動産で持つほうが、お得意識があります。しかし、不動産は周りの環境を含めて購入する人も多く、昨今の空き家増と人口減、地震リスクなど考慮すれば、早めの処置も対策の1つです。その他にも金融資産の内容確認などやらなければいけないことが山積みですが、恐らく何もせず時間が過ぎていくのでしょう。莫大な荷物の廃棄には、荷物の山が築かれた時間に比例して長い時間がかかりそうです。

優先順位を決められない理由も様々

高齢期になり判断能力が不十分になれば、やるべきことの優先順位を決められなくなりますが、それなりにお元気でも、昔からのこだわりが強い分、いろんな処置や手続きが遅れがちになります。
何れにしても、若いときからいろいろな事例に遭遇したら、自分のこととして考える習慣を身につけ、親族などに希望を伝えておきたいもの。また時流にあった考え方も重要で、希望が多い場合は希望に見合うお金の準備が必須です。併せて、お金が不足ならいろんなことを切り捨てる思い切りの良さ=金銭のバランス感覚を今から身につけておくといいですね。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)、『認知症マネー まるわかりガイド』(相続・後見マネー塾 (共著) アールズ出版)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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