セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

遺影撮影された方にインタビュー
     〜  終活の形もいろいろ  〜

昨今ひそかにブームな「終活※1」。
いずれは訪れる人生の終わりに向けて準備に取り組む活動です。平均寿命も伸び、今や高齢者の定義が75歳となる時代において、予想外の災害も各地で発生し年齢に関わらず訪れる不慮の死も他人事ではありません。
「終活」でイメージするのは、相続の準備、遺言作成、老後の住まい・介護・医療・葬儀などに対する自分の気持ちを記載するエンディングノートなどが浮かびます。皆さん死をタブーとせず残りの人生をより前向きに過ごすために終活を捉えているようです。しかし、すべての人が「終活」準備を経て亡くなっている訳ではありません。
例えば、今回ご紹介する葬式時の「遺影」。私の関係する人は長患いの末に亡くなりましたが、その人らしい写真探しに苦労しました。もっと早く気がついていればと反省しきりのとき、「終活」の一部として夫婦で「遺影撮影」をされた方にお会いできました。終活の受け取りかたは人それぞれですが、何かの参考にしていただけたらと思います。

終活(しゅうかつ※1)とは、自分の人生の終末のためにする活動のこと。就職活動が「就活」と略されるのと同種の造語で、週刊誌の連載記事で初めて使われたとされる。当初は自分の葬儀や墓について生前に準備することをさしたが、ことばが定着するにつれ、医療や介護についての要望、身辺整理、遺言、相続の準備なども含まれるようになった。
日本大百科全書(ニッポニカ) より

夫婦で「遺影撮影」のAさん夫婦の場合

A夫さん(70代後半)・B子さん夫婦は、3年前から介護付有料老人ホーム「サンビナス立川※2」に入居中、平成29年1月末施設で開催された終活支援イベントセミナー「出張写真館〜生前遺影の準備」に参加後、平成29年2月初め施設にて2人で写真を撮ってもらいました。遺影なので1人1人で撮影かと思いきや夫婦一緒に撮影。話題のトランプ大統領にあやかり夫は赤いネクタイ、「2人で見つめ合って!もう少し寄り添って!・・・」と、プロの写真家※3は優しく声かけつつ次々とシャッターを押していきます。撮影終了後、パソコンに入力された画面を覗く2人に思わず笑顔がこぼれます。傍らで見学した私も思わず納得の自然な写真の出来上がりです。

※2サンビナス立川介護付有料老人ホーム(経営母体は、明治安田生命100%出資の子会社)
原則入居時自立の施設ですが、介護が必要になった場合希望者は介護棟に移動も可。空き室があれば入居時介護棟に入居も可能とのこと。料金は前払金3591万円〜5541万円(別途消費税)、月額利用料 175,620円(税込み)+別途介護サービス1〜2割+その他日常生活費等(1人入居・78歳以上・自立棟・金額の差は部屋の広さによる)とかなり高額。
施設は派手なシャンデリアやプールもなく落ち着いた内装で、コスト的には超豪華ではないが、かなりハイレベルの施設。入居者の前職は元サラリーマン、大学の先生等が多いとのこと。(2017年2月現在)
※3出張カメラマン 株式会社D―onによる撮影。当日は夫婦12組と、夫婦1組と単身(各1人ずつ)参加。

A夫さんにお聞きしました

Q  なぜ遺影をとろうと思ったのでしょう?
A  そもそも施設に入居が私にとり終活の手始め、遺影撮影は終活の一部と考えている。施設のチラシをみて元気なうちに撮っておこうと気楽に参加。私も既に健康寿命(男性)は過ぎている、いつ倒れるが不明だがせめて心の健康寿命は自分の努力次第で伸ばせそうだ。心安らかに過ごし前向きに生きるために写真を撮った。これで安心が1つ増えた。仮に寝たきりになっても2人一緒の写真が見られる。

Q  写真を2人で撮ったのはなぜ?
A  実際の葬儀のときはネガを切り取って1人の写真で使用するが、夫婦とも亡くなり仏壇に飾られるとき夫婦が一緒の写真が欲しかったから。子がどの写真を遺影に使うか心配だった。若すぎても年を取り過ぎもイヤ、やはり60〜70代がいいのかも。自分が安心するために終活しており、自分の意思で決められるときに決めることが大事だね。

取材しての感想

今まで終活に熱心なのは女性という先入観がありましたが、70代後半の男性からこれほど率直なお気持ちをお聞きできたのは意外でした。男性も女性もなく長い人生をどう過ごすかお互い話しあい実践が求められる時代になってきたようです。また、こうしたことができるのも、原則自立の入居施設だからかも知れませんね。

私が遺影撮影に興味を持った理由

私が遺影に興味を持ったきっかけは、長年関係した2人を昨年見送ったからです。亡くなってすぐ葬儀屋さんとの打ち合わせのとき、遺影写真を探しましたが、中々本人のイメージにあうものがありません。そもそも私が関係するようになったときは、ご本人は既に病気または判断能力がありませんでした。結局、遺影写真は葬儀屋さんが示した背景と衣服の見本を組み合わせた合成写真になってしまいました。人生の最期の写真なのに残念でした。
その反省から今後はお元気なときの明るい顔の写真を撮っておきたいと思った次第。最期だけでなく生存中はテーブルの上などに置いてもらい、いつも見ていただけたら最高です。A夫さんが言われたように、自分の安心のために今できることや気づいたことを気楽にやる姿勢が、より安心に繋がるのかも知れません。私も年を重ねるにつれ最近は敬遠しがちな写真撮影でしたが、今回初めてつれあいと2人の写真を撮っておきたいと思ったのが収穫でした。



執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFP®
社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)、『認知症マネー まるわかりガイド』(相続・後見マネー塾 (共著) アールズ出版)。
HP: http://cyottoiwasete.jp/

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