セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第77回:高齢期の安心を求めて入居した筈なのに
〜 高齢者住宅も倒産の時代 〜

ライフプランという言葉が浸透してきたせいか、今おかれている時点から将来ありたい姿をイメージして、自分や家族の夢実現に必要なお金の見通しをたてる人が少しずつ増えてきました。とは言いつつ、子育て終了、定年などの節目、高齢期前半まではそれなりにシビアにマネー管理ができた人でも、70歳以後における終の棲家探しに、詰めの甘さが気になるケースが多いのも現実です。今回は、高齢者住宅の倒産が増えている現状を踏まえて、やり直しが難しい高齢期の住まい選びについてお話しします。


高齢期の住まい選びは慎重に

人の寿命は一生を終わってみないと誰にも分かりません。結果的に現在の資産などで間に合うこともあるけど、明らかに不足しそうなときは、他の施設の入居を検討も必要でしょう。これまでの夫婦や子どもとの力関係で決まることも稀ではありません。本当に当事者の願いなのか、話し合える関係作りを日頃から築いておくことも必要です。

事例1離婚分割で年金が7割に減少したが・・

熟年離婚して自宅を妻に渡した男性(70代後半)の場合、余程生活能力や金銭感覚がないと高齢期は大変です。熟年離婚の場合、婚姻期間も長いのが一般的なので、妻への分割年金額も多く(=夫の年金額の目減り大)、かつ二人ならそれなりにあると思っていた資産も分けたら思ったほどでなかったとは男性の感想。まだまだ元気な男性は、見守りがあるサービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)に入居しました。

食費代を含めた月施設費用(駅近でかなり高額)と小遣いを含めた生活費の計と年金収入との差額は月15万円(年180万円)以上。仮に、今後病気になり入院、介護状態になり介護サービスを受けたときの費用が発生したときは、もっと金銭的に厳しくなります。そもそも要介護度が重度になったとき、サ高住での暮らしが快適かは不明です。夫婦でいたときの暮らしの質をそのまま維持したい気持ちもあったようですが、資金的に少し入居を急ぎすぎた感もありそうです。生活感のない男性が陥り易い例です。

事例2夫婦の意識のずれ

施設側が見学者を募集して複数で施設見学するときは、見学者は「より慎重に」を心に刻んで見学が必要です。施設入居に積極的な他の人の意見や施設側の案内の雰囲気に飲み込まれやすいからです。
お元気な妻と杖がないと歩行が難しい夫の場合。施設内の暮らしは快適ですが、知的な夫の暮らし方を満たせるほどではありません。かつ周りは自然のみで、街にでるには限られたバス便しかありません。バスの階段を上がるのさえ不便な夫に妻の手助けは欠かせません。
施設入居で妻の負担は増え、自由度は減りますが、夫には施設側のアナウンスしか入ってきません。
施設入居で、かなりの一時金と月施設管理費と自宅維持費の両方必要。そもそも妻はお元気で今の生活を楽しみたい気持ちが強く、夫は単に施設入居すれば今の不自由さが一挙に解決すると夢見ている雰囲気で、じっくり夫婦で話し合える雰囲気ではありません。やはり二人ともお元気なうちに施設入居のスタンスを決めておくべきでした。

情報サ高住の廃業5年間で125カ所

介護を必要とする高齢者の受け皿となる賃貸住宅(サ高住)のうち、倒産などで廃業した施設が2011年から15年度の5年間で125カ所(国土交通省・2017年2月調査実施)と公表されました。廃業の理由は、募集しても入居者が集まらないとのこと。募集前に廃業は64カ所、入居後の廃業は61カ所。高齢者の増加を見込みシルバー産業に安易に参入したけれど、事業者も経営となると高齢者の懐具合や介護職員集めも関係するため大変なようです。
そもそもサ高住はお元気な単身者や夫婦が入居対象の住宅でした。お元気な人が入居なら入居期間も長引き、資産から取り崩す額の総額もかなりなもの。入居の決断に迷いがでるのも納得です。


サ高住は、安否確認・生活相談をなどのサービスを提供・原則25u以上(但し、居間・食堂など共有部分が十分な場合は18u以上)のバリアフリーなど一定以上の基準を満たした住宅。
60歳以上で自立および要介護者等が入居可能。家賃・生活支援サービス費・共益費などで月9万円〜13万円。別途、必要に応じて食費・介護サービス費・本人生活費など必要。費用は施設で格差あり。元気な単身者のニーズも高いが、要介護の入居者も多い。必ずしも介護体制は十分でないところもあるのも現実。




施設が廃業して困るのは高齢者です。経済的にゆとりがないと次の施設の選択肢も狭まり、当初のマネープランも変わることに。認知症の人は環境が変わると病状が悪くなりがちです。


高齢者施設の廃業は今後増えそう!
〜 厳しい運営実態 〜

最近、サ高住の廃業、特別養護老人ホーム(以下特養)に空きがあるのに入居できない、介護付き有料老人ホームの空き室多数など、高齢化が進む中気になる情報が増えています。
しかし、前兆は高齢者施設の見学でなんとなく私も薄々感じていました。

@ 特養に空きがあるのに入居できない
特養に入居希望の申請書に何件も希望先を書いて役所に申し込んだ手続きから、統計上 の待機者増が見えてきます。実際に特養に見学にいき介護職員等不足による空き室(他床部屋)も確認。ある特養では、「介護・看護職員大募集の垂れ幕」が目につきました。今後は介護が必要になる人が増え、支える若い世代の人口不足などから介護職員等不足は必須。介護職員の今以上の待遇改善が急がれます。最近ヘルパーの割合が増え介護福祉士の職員が減っている、窓口に職員不在の施設もあり、入居者の満足度からも問題があります。

A 介護付き有料老人ホームに空きが目立つ
我が家の近くにある、管理がとても良い介護付き有料老人ホームの空き率が50%台。いい施設と分かっていても、入居一時金と毎月の管理費などを考慮し、資産を取り崩す期間と寿命から計算して入居の是非を考える高齢者側にも入居できない理由があるのです。特別高額の介護付き有料老人ホームは、それなりの資産家のニーズがあるので問題ありませんが、上記の施設のように、普通より少しランクが上の施設が意外と厳しいことも分かりました。

現在の高齢者でも厳しいのに、公的年金の受給総額が増えそうもない若い世代が高齢者になる未来の施設経営が相当厳しいことが分かりますね。統計はある意味実態を写す鏡ですが、かなりな時間差があります。若い世代は、親のやりくりを参考にしつつ自分の公的年金額も試算して、終の住まいはどこにしたいのか、どこまで妥協できるかなど、家族で早めに話しあっておくといいかも知れません。結果的に、いろいろ考えていたけど最期まで自宅で暮らせたら文句なしでしょう。

音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)

仲間8名と女性の視点からライフプランテキスト作成後、FPとして独立。
金融機関や行政・企業・組合・矯正施設、ハローワーク等で、ライフプランセミナーや年金セミナー等実施。
年金相談や高齢者施設見学を多数実施すると共に、成年後見人等を複数受任し啓蒙セミナーを実施。 専ら、現場主義を貫き人との対話を大切に活動中。
主な執筆歴  読売新聞に「音川敏枝の家計塾」 日経新聞コラム 「社会保障ミステリー」
主な著書に 「年金計算トレーニング BOOK」 ビジネス教育出版  他
HP: http://www.cyottoiwasete.jp/

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