セカンドライフの落とし穴

セカンドライフの落とし穴

第80回:終活セミナーが盛況ですが・・・
〜 最期まで自分らしく過ごしたい人の環境も様々 〜

先日、都内の消費者センターの依頼で、50代以上を対象に「老後に必要なお金とエンディングノート」のセミナーを実施しました。30名の募集に対し60名ほどの応募があり盛況でした。
担当者曰く、最近は終活セミナーが人気とのこと。皆さん、漠然と最期の迎え方に不安を抱いているのでしょう。
併せて、地域の医療機関が開催する「今から考える自分らしい最期」、在宅での看取りがテーマのセミナーも勉強のため受講しました。自分の親の最期に接したこと、また仕事で病院や介護施設で体験した高齢者の実態を知るにつけ、高齢期の生き方の難しさを実感しているからです。
2つに共通しているのは「最期まで自分らしく」のフレーズ。一見心地良い響きですが、真意を理解している人がどれほどいるのでしょう。ご存じのように人の死亡率は100%、最期の迎え方は誰もの感心事です。今回は、自宅などでの看取りなどについて、私が日頃から感じている素朴な疑問を取り上げてお話します。


地域包括ケアシステム 〜地域で生活できるよう医療・介護・予防等連携で在宅生活を支える

国は介護保険制度の持続を目指し、地域包括システムを強化しています。つまり、 サービスを受けたときの負担と保険料の改正、医療・介護・予防等の連携により在宅生活を支える方向に動いています。自宅などで最期を迎えられ看取りを可能にする体制づくりです。そこで医療機関なども高齢者の囲い込みに動いている訳です。

問題は、今後高齢者の1人暮らしや高齢者のみの世帯の増加が予想されていることです。
都市部では近隣のつきあいもあまりなく、お互い助け合う環境は難しい現実。地方でも人口減少が進むなか高齢化による体力の衰え、人口減少で互助に期待できません。
また、人との交流も少なく自由に生きてきた人に、老後の暮らしの質を高めるために急にコミュニケーション能力を期待することは気の毒かも知れません。
いろんな事情は人により様々ですが、多くの人は、将来必ず訪れる終末期の不安を抱く割に、そのときのために今自分でできる範囲で可能な対策をしていない気がします。

素朴な疑問 1 〜 最期まで自分らしくとは?

いろんな高齢者にお会いして、ずっと気になっていました。果たして、本人が望んでいた「最期まで自分らしく生きる」生活だったのか。かつ、「自分で選んだ生き方だった」のかと。先日、少し疑問が解消した記事(読売新聞 平成29年11月1日)を見つけました。

在宅で迎える死と自分らしい生活についてのコメントです。多くの人の「自分らしさ」が元気な頃の自分のこと、病院から家に戻ったところで「自分らしい生活」などどこにもみつからないのが現実。自分らしさを失っていくのが終末期、変わりゆく新たな自分を受け入れない限り「適切な医療や介護」も「自然な死」もない。在宅医療は厳しい現実に向き合う必要があるという趣旨です。(武蔵国分寺公園クリニック 院長 名郷 直樹 氏)

素朴な疑問 2  自宅で最期を迎えたいが約6割、事前に詳しく話し合ったのは2.8%

「自宅で最期まで療養したい」が約1割、自宅で療養して、必要になれば医療機関等を利用したい人を合わせると、約6割が「自宅で療養したい」と希望しています。

しかし、現実に自宅で亡くなる「在宅死」の割合は全国平均で12.8%。市区町村別では医療機関の少ない過疎地などで割合が高くなる傾向が見られるとのこと。ちなみに全国1は伊豆諸島の東京都神津村で54.8%。次いで鹿児島県与論島の50% (2,014年人口動態統計 厚生労働省)。いずれも離島です。なお、在宅死の中には老衰・病気等での死亡以外の自殺・他殺・孤独死・医師が死亡時に立ち会っていないケースなども含みます。
一方、自宅で最期を迎えたいと希望する人が多い割に、最期のおりの医療について家族と事前に詳しく話し合った人は2.8%と、ごくわずか。全く話し合ったことがない人が55.9%とは驚きです。
そのときはまだ先と思っているのでしょう。イザ最期のときを迎えるときには、本人の気持ち的にも判断能力的にも、深刻な話しが不可能になっているイメージですね。残念ですがよくある例です。

素朴な疑問 3 〜 60%以上が最期まで自宅での療養は困難と判断

自宅等で最期を迎える場合、一般的には家族等の支援体制が整っているかが関係します。
統計からは、実現可能と回答した割合が、一般人の6%より医療福祉従事者(医師26%、看護師37%、介護士19%)が多くなっています。確かに医療・介護提供者側から可能でも、本人を受け入れる側 (家族など) の事情は様々です。

なお、自宅で最期まで療養することが困難な主な理由は、家族に負担がかかる、病状が急変したときの対応に不安が残るなどです。特に女性の場合、自宅療養の世話の大変さを経験上知っているためからの意見もありそうです。目立ちませんが、状態が重くなったときの金額の負担増も気になるところです。世の中、本人たちに経済的ゆとりがあり、家族に介護力がある恵まれた人ばかりではありません。

素朴な疑問 4  単身者でも在宅で看取りができるか?負担は?

家族の負担を考えて自宅での療養をあきらめる人も多いと思います。ましてや単身の場合、福祉や医療関係者との連携がより必要となり、金銭的負担も大変でしょう。看取りに限らず、 介護付き有料老人ホームやグループホームに入居の場合も、高齢者施設等の実態を知らずに入居を拒否するケースもあります。ですが、もっと早く入居しておけば良かったとの声も時に伺います。また、同居でも家族が働いている場合、昼間はほとんど1人のケースもあります。
家族がいれば、すべて解決ばかりではありません。

単身者(家族が同居でも昼間1人の疑似単身者)増が予想される中、かかる費用なども具体的に知りたいのが人情です。しかし、多くの医療関係者等のセミナーでは、自宅等での看取りの良さは多面的にアピールしますが、支える家族の裏の苦労や本人の日常的な暮らし、かかる金額は伝えません。個々で異なるのは分かりますがよくある例でも知りたいものです。
今回も、パネルディスカッションの前に質問を受け付けたので提出しましたが、「単身者も自宅等で看取りが可能です」の一言で終了。そこ(金額等)が知りたかったのに・・・

例えば、成年後見制度を利用した方がいいと分かっていても、後見人等に支払う報酬額を考え、払いたくないと利用に踏み出せない人もいます。
同じように、単身者が自宅で暮らせたらいいのは分かっていても、医師に24時間いつでも必要な時に往診または訪問してもらう、またはヘルパーさんなどに自宅に泊まってもらうなどは相当な心とお金の負担が予想されます。
一般庶民が気楽にお金のことを質問してお答えしてもらえる場所がほしいものです。または質問すらできない大半の人向けに、医療側からでなく本人側にたった情報が欲しいのです。自分らしくは、どこで最期を迎えるか自分で選択することから始まります。例え結果的に不可能になったとしても・・・

音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)

仲間8名と女性の視点からライフプランテキスト作成後、FPとして独立。
金融機関や行政・企業・組合・矯正施設、ハローワーク等で、ライフプランセミナーや年金セミナー等実施。
年金相談や高齢者施設見学を多数実施すると共に、成年後見人等を複数受任し啓蒙セミナーを実施。 専ら、現場主義を貫き人との対話を大切に活動中。
主な執筆歴  読売新聞に「音川敏枝の家計塾」 日経新聞コラム 「社会保障ミステリー」
主な著書に 「年金計算トレーニング BOOK」 ビジネス教育出版  他
HP: http://www.cyottoiwasete.jp/

         

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